2021年夏のインバウンドはギリシャの一人勝ち
ギリシャのインバウンド戦略は、ただ規制を緩和したわけではない。感染対策の規制はむしろ厳しく、加えてワクチン接種など感染予防のための施策を徹底し、それを証明するシステムを作ったのだ。
ギリシャの観光のオンシーズンは初夏からだ。グリーンパスのおかげで21年は、いち早く外国人旅行者を受け入れることができた。
世界中でパンデミックが続いていたにもかかわらず、同年の7月と8月は、欧州の国々のなかで最多の200万人以上の外国人旅行者を迎え入れた。秋口になっても多くの外国人旅行者を見かけた。
旅行者を受け入れるギリシャ国民の大半がワクチンを必要回数接種済み。そしてグリーンパスによりギリシャに入国した外国人旅行者もワクチン接種完了、PCR陰性等が確認済みで、お互い「感染を防ぐためにすべきことはした」という意識の共有が安心感をもたらしたと思う。
それは筆者自身が肌で実感した。20年の夏にアテネ近郊の海辺で休暇を過ごしたが、アジア人の外見に、警戒するようなそぶりを見せる人はいた。しかし21年の夏は、地方にも足を運んだが、どこでもコロナ禍以前と同様の温かいもてなしを受けた。
同時期、日本はワクチン接種が進まないうちに五輪開催に踏み切った。大会期間中、開催都市の東京では感染が急拡大したが、ギリシャの国内状況はそれとは対照的だった。
昨年の観光収入は約1.37兆円
今年1月21日のギリシャ銀行の発表によれば、21年の1月から11月までの外国人旅行者は1430万人。観光収入は104億ユーロ(約1.37兆円)で20年同期43億ユーロの144.6%増だった。
これはインバウンドの流入が96.8%増加したことに加え、1回の旅行あたりの平均支出額が22.6%増加したことによる。当初の目標値である19年同期の利益5割を上回る大復活だった。
「観光戦略はポストコロナ社会への橋渡し」という大局観
ミツォタキス首相はインバウンドの観光復興計画を「ポストCOVID時代への橋渡し」をするためのものだと述べている。
夏の観光オンシーズンが終わってもホテルや飲食店などのスタッフは「COVIDフリー」の目標を掲げ、非常に注意深くコロナ対策に励んでいる。
筆者は昨年の11月にギリシャの世界遺産メテオラを訪れたが、ホテルや飲食店は律義に全ての客に対し、屋内スペースだけでなくテラス席でもワクチンパスとIDの提示を求めていた。屋外でも旅行者も地元の人々も皆、マスクをしていた。
オミクロン株の出現で、昨年11月からギリシャの感染対策は再び厳しくなっている。スーパーや公共交通機関利用の際は高規格のKN95マスク、または2重マスク(サージカルと布製)の着用が義務。飲食店の従業員も同様だ。飲食店や娯楽施設は時短営業、立食や音楽も禁止されている。(今月末までに段階的な解除が検討されている)