実績にならなかった仕事も書き出してみる
さらに僕は、退職時に挨拶をする前に、一緒に仕事をした際のエピソードを交えた「退職挨拶ストーリー」を簡単に作っておいた。次につなげるために、「お世話になりました」のひとことで済ませる挨拶を回避したのだ。送り出す側に立つと「お世話になりました」だけで終わってしまうとまったく印象に残らないものだし、人によっては「たったひと言かよ」と面白く思わない人もいる。僕がそういう人間だった。ストーリーを作ることで、自分を客観視して、うまくいかなかった仕事や関係も消化できる。
僕は退職を決めたときから、在籍時からの活動を振り返って、一緒に働いた人物と、関わったプロジェクトを書き出していった。リストアップとストーリーを書き出すことによって、退職に至るまでの感情的なしこりは制御できるレベルまで抑えることができた。
転職の際に在職時の実績や成果をまとめる人は多い。ネットにアップされる「退職エントリー」は人気のコンテンツである。そこから一歩進めて、実績にならなかった仕事、記憶から抜け落ちていた業務に関連したものを書き出して整理することをお勧めしたい。
別業界に転職しても活躍できたワケ
僕の場合、退職の時点で次の職場が決まっていなかった。ぼんやりと別の業界で働きたいと思っていただけだ。ツテもコネも展望もなかった。だが、社内社外問わず、一度仕事を一緒にしたことのある人たちまで、退職をきっかけに挨拶をしたことで、つながるきっかけができた。
そのきっかけをもとに食品業界というまったく別の業界に移っても、見込み客を増やすことに成功した。働く場所や業界が変わってしまえば、前職時に濃い関係ではなかった人たちと違う立場で接する可能性がある。見込み客にも満たなかった人が、最重要見込み客になることだってある。
このように僕は別業界へ転職したあとも、スムーズに仕事ができたのは、退職の際に丁寧な退職活動をおこなったからである。その際にあらためて確認した人間関係や仕事を掘り起こしておいたので、転職後にその掘り起こしをきっかけに、新規開発をすすめることができたのだ。
僕は運輸から食品業界へ転職した。業界が変わると営業をかける対象が変わる。最初に任されたターゲットが社員食堂だった。コネはなかった。社員食堂は福利厚生カテゴリーだったので切り崩し方もわからなかった。担当者も営業担当から総務人事になるので、前職で積み上げたコネは役に立たなかった。最初の1年での成約は難しいと同僚に言われた。