図形を描くことで鍛えられる洞察力や発想力

一方、図形の問題は、手順だけでは解けません。図形ができる子は、図形の性質を見抜くことができるだけでなく、図形をイメージすることが得意です。

数式中心の大学入試において、初等幾何的な図形感覚を東大・京大などが重視する理由も、多分ここにあります。

図形を描くことで鍛えられる洞察力や発想力は、今の社会でもとても重要です。

複雑な物事の本質を見抜く、異質な相手と自分との考えの類似点を見つける、議論の妥協点を思いがけないところに発見する。

図形を正しく描くことから始まる図形学習は、創造する脳を刺激するという大きな役割を担っていると思います。

なぜ、おうぎ形がつぶれている図形を描いてしまうのか

まずは、直線から正しく描いてみよう。

さて、お子さんに、三角形やおうぎ形などの図形を描いてもらってみてください。

図表2のように、平行なはずの辺が平行でなかったり、直角が正しく直角になっていなかったり、おうぎ形がつぶれていたりしないでしょうか?

これらは、算数ができる子にもよく見られる例です。将来、自分で描いた図を使って解く問題で苦戦することのないよう、日ごろから、「正しい図を描く」ことを意識した図形学習を進める必要があります。

ではまず何から始めたらよいか。

うちの子はまだ低学年だから図形は教科書で習っていない、などと言わずに、すぐに始めてほしいと思います。

最初のうちは遊び感覚でいいのです。上に兄・姉がいるなら、教科書や問題集を借りて、出てくる図形問題の図をまねして描いてみるとよいでしょう。大切なのは、「正しい図」「正しくない図」という意識、正しい・正しくないという心の働きです。

私の教室で生徒にすすめているのは、1cm方眼(マス目)のノートです。小学生が自分で描いた図で問題を考えるために、ちょうどよいマスなのです。

まずはフリーハンドで描いてみてください。定規で図を描く練習も必要なのですが、まずは自分の手で描く経験が欠かせません。