④独立・起業する

最後に「独立・起業する」シナリオです。リスクが高いイメージがあるため、多くの人は選択肢に入れていないと思います。

「独立」と「起業」が混同されていることが理由ですが、この二つはまったくの別物です。「独立・起業」と聞いて多くの人がイメージするのが、ネットショップを始めるとか、資格を取得して開業するなどの「起業」ではないでしょうか。今まで経験のないことを想定するため、「絶対に無理」と感じてしまいます。

一方、「独立」はそれとは違い、今まで培った経験の延長で考えます。会社に雇われて給与を受け取る方法から、会社に雇われずに直接社会から報酬を受ける方法に変わるイメージです。シニアからのキャリアチェンジで成功しているのは、この「独立」のシナリオです。

私のように企業から業務を請け負うインディペンデント・コントラクター(独立業務請負人)として働くのも一つの方法です。

私が何をやっているかというと、実は人事という仕事は会社員時代と変わっていません。複数の企業と契約を交わし、人事総務サポート業務を請け負っています。

独立を考えるなら、今の職場でどんなサービスがあったら喜ばれるだろうかと考えてみると、色々なサービスの可能性があるはずです。また、冒頭でも紹介した法改正によって、フリーランスや起業した人への業務委託が推奨されていけば、独立したい人には追い風となるでしょう。

独立直後から現役時代のように稼ぐことは難しいかもしれませんが、小さな仕事を数多くこなすことで収入源が分散され、そこから徐々に広がりも生まれます。再雇用で働き続ける場合と違って、収入は上がる可能性があり、65歳以降も働き続ける限りは長く収入が見込めるのが、独立・起業のメリットです。セカンドキャリアには、今の仕事のままで独立する道をぜひ考えてみてはいかがでしょうか。

キャリアの棚卸しはできるだけ具体的に

ここまで四つのシナリオを紹介しましたが、どれを選択するにしても、なりゆき任せが一番危険です。自分が納得できる選択をするために、また、自分の力を発揮できる仕事に就くために、ぜひ「キャリアの棚卸し」をすることをお勧めします。

キャリアの棚卸しとは、今まで培ってきた経験や知識、スキルを再整理し、「見える化」することです。その際、「人事」「経理」といった大きな括りではなく、その時々で経験した具体的なタスクと成果を、可能な限り実績数字で表現することを意識してみてください。例えば、社内の改善活動に携わった経験があれば、そのときの役割や成果を「見える化」します。工場立ち上げに関わった経験があるなら、投資規模や効果を数値化してみます。