安易に早期退職優遇制度に飛びつくのは非常に危険

スコップで穴を掘る場合と、パワーショベルで穴を掘る場合とでは、全然アウトプットが違います。それと同様に、大企業の課長クラスが1000万円の年収をもらえるのは、会社が購入した情報や設備、教育システムなど、会社のストックというパワーショベルをフルに活用しているからです。したがって、転職して会社のストックが異なれば、出せる成果も変わってきます。このことを理解していない人が多いというのが実感です。

有効求人倍率だけを見ると、2019年は1.60倍。2020年は、コロナ禍の影響もあり、1.18倍という低い数字になっています。しかし、これは全職種・全世代を平均した数字であり、ホワイトカラーのシニア世代が希望する事務的職業の有効求人倍率は1以下で、低水準です。離職後1年以内に次の仕事が決まる割合も、55歳以降は4割ほどです。

このように、シニア世代の転職は厳しいのが現実ですから、何も考えずに早期退職優遇制度に飛びつくのは非常に危険です。

ただし、夢を実現するために主体的に選択するなら、転職も悪くありません。わかりやすい例を挙げれば、将来はそば屋を開きたい人が、事前に経験を積むため、そば屋チェーン店に転職するなどは、可能性がありそうです。

③出向する

「出向する」シナリオは、出向制度のある企業に勤める人にしか当てはまりませんが、もし自分の会社に出向先があるなら、キャリアチェンジの一つとして積極的に検討されることをお勧めします。

テレビドラマ『半沢直樹』(TBS系)の影響もあり、「出向=左遷」というネガティブなイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、出向の場合、給与を含む主な労働条件は出向元の条件が適用されるため、給料が下がるわけではありません。身分ももとの会社のままです。

仕事の内容も、今までやってきた業務に関連する仕事に就くことが多いため、それまでの経験やスキルを活かすことができます。しかも、子会社や規模の小さな企業に出向する場合は、役職が上がるケースもあります。

私自身、会社員時代は3回の出向を経験しました。出向は将来のキャリアへのスキルや知識を磨き上げる、やりがいのある絶好の機会だと思います。