①今の会社で働き続ける
まず、大半の人が選択するのが、「今の会社で働き続ける」というシナリオです。気になるのは「60歳以降、給料はいくらもらえるのか」だと思います。
先ほども述べた通り、60歳の定年後は再雇用で対応する企業がほとんどですが、賃金水準は現役時代の半額を覚悟する必要があります。
ある調査結果によると、フルタイム勤務での平均は328.8万円です。しかも、60歳以降は給料が上がることはほとんどなく、65歳以降は収入のあてが途絶えてしまいます。
また、再雇用されたら65歳までは雇用が保証されると思っている人も多いようですが、再雇用の場合は、1年ごとに契約更新する非正規従業員。病気になっても休職規程の対象とはならず、「翌年の契約更新はなし」ということも十分あり得ます。プロ野球の1年契約と同じと考えていただければいいでしょう。
仕事の内容は、これまでは現役時代と同じ職場で同じ仕事をすることが一般的でしたが、これからはそうもいかなくなります。RPA(ロボットによる業務自動化)の導入やアウトソーシングにより、再雇用者に割り当てられていた事務作業がどんどん減っています。
一方、単純作業的なノンコア業務は人手不足が深刻になっており、いわゆる3K職場に再雇用者が充てられるケースも増えていくと予想されます。
自分で考えた結果としてこのシナリオを選ぶならいいのですが、多くの人は60歳で定年を迎えても特にやりたいこともなく、「周りの人が定年以降も働き続けるから、自分も今までの会社で働こう」という理由から選択される方が多いのではないかと思います。何も考えずに会社任せにすることは、人数も多いバブル入社世代にはリスクの高い選択肢と言えるでしょう。
②転職する
次に、「転職する」シナリオを見てみます。
30代から50代前半までの男性の約半数は転職経験がないため、転職のシナリオは一般的なビジネスパーソンにとってはハードルが高いかもしれません。また、シニアからの転職でポジションや収入アップを目指そうとするとうまくいきません。
まず、55歳を過ぎてからの転職は、よほど専門的なスキルがない限り、収入の現状維持は困難と考えたほうが無難です。特に給与水準が世間水準を大きく超える大企業に勤める人が、中小企業へ転職する場合、大幅な給与ダウンは免れません。
注意していただきたいのは、これまでの成果は自分の能力だけの結果ではないということです。成果は、「会社のストック」と「自己の能力」の掛け算です。