アメリカのバイデン政権が支持率低下に苦しんでいる。今年11月の中間選挙でも敗色濃厚だ。上智大学の前嶋和弘教授は「『批判的人種理論(CRT)』という人種差別に関する学校教育が、白人への逆差別を助長しているという主張が保守派のトランプ支持者らの間に広がっている」という——。
2021年10月9日、米国アイオワ州デモインで開催されたセーブ・アメリカ集会で支持者と話すドナルド・J・トランプ前米大統領。この集会は、2020年11月の総選挙後、トランプ氏がアイオワ州を初めて訪問したことを強調している。
写真=EPA/時事通信フォト
2021年10月9日、米国アイオワ州デモインで開催されたセーブ・アメリカ集会で支持者と話すドナルド・J・トランプ前米大統領。この集会は、2020年11月の総選挙後、トランプ氏がアイオワ州を初めて訪問したことを強調している。

既に中間選挙での敗北が予想されているバイデン政権

今年11月に中間選挙を迎えるアメリカでは早くも「バイデン政権、危うし」という言葉が飛び交っている。

中間選挙は大統領の4年任期の折り返し時期に行われる。下院の435人全員が改選になり、上院も100人のうちの3分の1の34が改選となる。日本でいえば衆議院選挙と参議院選挙のダブル選挙並みの大きな選挙だ。

選挙結果によって大統領が変わることはないが、政権は過去2年間の実績に対して国民の審判を仰ぐ。

この選挙には「方程式」がある。どうしても現政権に対する批判票が増え、その政党が大きく議席を減らすというものだ。

現在、上下両院で民主党が多数派と言っても、上院は50対50、下院は9議席差と超僅差である。もしどちらかの院で共和党に多数派をとられたら、政権が進めたい法案は一気にストップし、国内政治の観点からは早くもレームダック化してしまう。

トランプもオバマも足をすくわれた

トランプ、オバマという前の2つの政権も政権発足時には上下両院いずれも自分の政党が多数派だったが、最初の中間選挙で大きく足をすくわれた。

2010年の中間選挙の場合、当時のオバマ政権にとって、状況は深刻だった。民主党は何とか上院で多数派を維持はしたものの、6議席減。下院では63議席減となり少数派党に転じた。

この63議席という数字は、議席減としては75議席が入れ替わった1948年以降、62年ぶりの最悪の数字となった。オバマ政権は最初の2年で大型景気刺激策、ウォール街改革、オバマケアの3つの大きな国内政策をまとめたが、中間選挙以降政策運営は行き詰まった。

「何もできなかったオバマ政権」という日本でも広く伝わったイメージは2010年中間選挙以降、6年間の政策が停滞していたためだ。

2018年、トランプ政権下の中間選挙では、共和党は上院では2議席増やしたものの、下院では41議席も民主党に奪われ、少数派党となった。メキシコ国境の壁建設やオバマケア撤廃などのトランプ大統領が掲げた大型公約は進まなかった。