幸せな人生を送るためにはどうすればいいのか。出版翻訳家の宮崎伸治さんは「無職の10年間に学びを重ねたことで、人生最高の幸せに到達するための方法を見つけることができた」という――。

※本稿は、宮崎伸治『自分を変える! 大人の学び方大全』(世界文化社)の一部を再編集したものです。

本を読む男性
写真=iStock.com/DjelicS
※写真はイメージです

知と格闘して見つけた「幸せになる方法」

私は現在、執筆家・翻訳家として活動する傍ら、副業や投資で生計を立て、外国語学習者のための検定機関の運営をライフワークとしている。

かつては60冊もの著訳書を出版していたが、40代はじめのころ、さまざまな理由から出版業界と決別し、10年もの間お金を稼ぐことは一切していなかった(拙著『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』に詳述)。

「無職10年」とはいっても、その間さまざまな大学で学問に励んでいたのだから遊び呆けていたわけではない。高校卒業後に入った大学では経済学、脱サラ後29歳で入った大学院では言語学を専攻し、40歳を過ぎてから工学、哲学、法学、商学、神学とそれまで学んだことのない学問分野に打ち込み、さまざまな角度から真理を追究し続けた。そしてその過程で私は私なりの幸せになる方法を見つけたのである。

「幸せ」と一口にいっても、さまざまなレベルがある。高収入が得られることを「幸せ」という人もいるだろうし、地位や名声を得ることを「幸せ」だと思う人もいるだろう。人によって「幸せ」の定義は異なるのだから、私が定義する「幸せ」を万人に押し付けようとは思っていない。私は私なりの「幸せ」があり、それをつかむ方法を見つけたといっているにすぎない。

ただそれは、他人からちょっとやそっと批判されて揺らぐような代物ではない。それだけ確固たるものを見つけたと思っている。

人生最高の幸せとは「エウダイモニア」だ

世俗的な価値観でとらえると、私のこの無職期間を「失われた10年」ととる向きもあるだろう。働きに出ることもなく、ゆえに社会にも貢献することもなく、ただ貯金を切り崩して勉強していただけだからだ。しかしこの年月は私にとって人生を大きく変えた「最も輝かしい10年」だったと思っている。

では、私なりの幸せになる方法とは何か。

ギリシャの哲学者・アリストテレスは人間の究極目的は「エウダイモニア」だといった。私も「エウダイモニア」こそ人生の究極目的であり、かつ人生最高の幸せだと思っている。そして幸運にもその究極目的を見つけられた人は、もはや金や地位や名誉にはそれほど興味がなくなる。なぜならその何十倍も価値あるものを手に入れているからである。

では「エウダイモニア」とは何か。

日本語では単純に「幸福」と訳されることが多いが、より正確に訳すとすれば「人間のすべてのすぐれた特性と価値ある活動が充分にその真価を発揮するような人生」となる。

自分の持ち味を最大限発揮し、それを通して世の中の人に喜んでもらう、これこそが「エウダイモニア」であり人生最高の幸せなのである。

そのことに気づいた私は、自分も「エウダイモニア」を目指すことを決意した。しかしいきなり達成することはできない。それはコツコツと努力に努力を積み重ねた後にはじめて達成できるものであり、その道はたやすくはない。長く険しいが、何物にも代えがたい至上の喜びになるのだ。