「さて」という入り方は、もはやヒーリングの域
安住君も“のみ声”なんです。『ぴったんこカン・カン』でも、僕だったら、
「山手線の池袋の駅から一駅、歩いても10分ほど、ここ北区滝野川、古舘伊知郎さんが29年間生まれ育った場所なんです。ここにたわしをつくっている古き会社がありまして、そこに私は立ってるんですけども」
って声を前に出してしまうけど、安住君は、
「東京の中心から車で12分ほど、〈間〉郊外とはいいませんが、〈間〉東京は北区滝野川におじゃまをしております。〈間〉さて」
とのみ声で話す。
「さて」というほど長い尺しゃべってないけど、安住君は、「さて」を入れることでチェンジ・オブ・ペースを醸し出します。「さて、ご本人がお見えになっています。古舘さん、どうぞ」
って、のみ声を使いながら、強く前に出さずにやるんです。
観ている人が、自発的に観たくなる気持ちにさせる。比較的低いトーンで優しいトーンで、わざとゆっくりと、
「東京の中心から車で12分、城北地域、北区滝野川におじゃましています。さて」
ってやるわけです。
絶対にかき乱さない。
僕はプロレス実況出身だから、かき乱してなんぼのタイプだけど、安住君の「さて」はヒーリングの域ですよ。
たけしさんの毒舌を“のみ声”で包み、話を転じる
『新・情報7DAYS ニュースキャスター』の時も、“のみ声マジック”がしっかり現れていますよね。大御所のビートたけしさんをうまく転がしていく。
たけしさんが毒を吐いたり、下ネタを言って、わざとニュースにそぐわないことを言った時の安住君のMCっぷりに注目してください。
「そんなこと言っちゃダメですよ」とか、「ちょっと受け切れません、次いきますよ」ってやっちゃうMCは多いけど、安住君は、たけしさん的な世界をフォローするという体です。
たけしさんの話を聞くだけ聞いておいて、
「番組の冒頭から素晴らしい暴走っぷり、ありがとうございます。さて」
って、やるわけです。
たけしさん的世界を否定するのではなく、のみ声で優しく包み込んで、まろやかに封じ込んで、話を転じるんです。
その方が否定するよりもはるかに衝撃が少ない。
こんなテクニック、誰もやっていません。安住君が発明した、そしてマネできないテクニックですよ。