TBSアナウンサーの安住紳一郎さんは、好感度ランキングで5年連続1位になり、2009年には殿堂入りした。人気の秘訣は何か。フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんは「安住君は人の心をつかむのが上手い。以前、12月30日に『日本レコード大賞』のMCを終えた安住君にLINEを送ったら既読スルーされた。驚いたのは翌日の大晦日に返ってきたLINEの中身だ」という――。
※本稿は、古舘伊知郎『MC論 昭和レジェンドから令和新世代まで「仕切り屋」の本懐』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
まろやかな雰囲気でMCをする「田舎もん」
安住紳一郎君は、自己プロデュースの神様ですよね。
毒舌を吐く時もあります。でも、自分の風体、表情、面差し含め、かつ、
「北海道帯広から出てたきた田舎もん」
をバックに背負って、まろやかな雰囲気でMCをするから許されるんです。
これがもしも東京の麹町にあるお屋敷で生まれ育って慶應幼稚舎から慶應大学までエスカレーターでご卒業になってTBSに入社したら、こんなに評価され、出世していない。
自己プロデュースって教育できない部分です。
発声、立ち居振る舞い、鼻濁音や母音の無声化、「こんばんはー」ではなく「こんばんは」。
こうしたアナウンサー教育はいくらでもできます。
しかし、“いなし”だったり、毒をちょっと出す“加減”とか、センスの部分は誰も教えられません。
2005年からはじまり16年目に突入したTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』。安住君はMCをやっていますが、頭が下がるのは、リスナーから来たハガキやメールに目を通すのはもちろんのこと、選曲も自分でしているんです。
例えば、昔のグループサウンズのザ・タイガースの曲をかける時、超有名な『シーサイド・バウンド』じゃなくて、マイナーと大ヒットの間ぐらいの、「そういえば、こんな歌もあったよね」っていう曲をかける。
日曜日の午前中にちょうどいいぽわんとさせる曲を選ぶ。MCとは、マスター・オブ・セレモニー、全体を指揮する人を指しますが、安住君は、
「プロデューサー・アンド・MC」
これがMCの真骨頂なのかもしれないですね。