予想外の「利下げ」に踏み切った意味
12月20日、中国人民銀行(中央銀行)は予想外の利下げを実施した。今回の利下げの背景には、不動産市況の悪化などによる景気減速が、中国共産党政権の予想を上回っていることがあるとみられる。
共産党政権は、景気の減速に歯止めをかけるため、かなり追い込まれた状況を迎えている。当面、共産党政権は追加利下げなど景気支援策を強化するだろう。特に、雇用を維持するために道路や鉄道の建設などインフラ投資は積み増される可能性が高い。それは、不動産市況の悪化による、セメントや鉄鋼などの過剰生産能力を部分的に吸収するためにも重要だ。
ただ、共産党政権が景気支援策を強化したとしても、短期間で中国経済が落ち着き、徐々に持ち直しに向かう展開は想定しづらい。むしろ、“ゼロコロナ対策”による動線の寸断や不良債権の増加によって、景気減速がこれまで以上に鮮明化し、場合によっては失速するリスクは高まっている。国家資本主義体制を強化し、経済成長を実現してきた共産党政権の経済運営はかなり厳しい状況を迎えている。
中小企業の資金繰りを支援するためだが…
2020年4月以来、1年8カ月ぶりに中国人民銀行が利下げを行った。それは、苦肉の策としての利下げといえる。具体的に中国人民銀行は1年物の最優遇貸出金利(優良企業向け貸出金利の目安)を3.80%と、0.05ポイント引き下げた。利下げの最大の目的は、中小企業の資金繰り支援にある。
その一方で、住宅ローン金利の目安である5年物の最優遇貸出金利は4.65%に据え置かれた。過去の利下げでは、1年物と5年物の最優遇貸出金利の両方が引き下げられた。今回の利下げは小幅かつ部分的といえる。
これまで、中国共産党政権と中国人民銀行は利下げ以外の手段で、中小企業の資金繰りを支援しようとしてきた。具体的に、中国人民銀行は預金準備率の引き下げ(市中銀行から中央銀行が強制的に預かる預金の比率)を引き下げたり、公開市場操作を通して金融システムへの資金供給量を増やしたりした。そうすることによって、国有・国営企業に比べて事業運営リスクの高い中小企業に銀行が融資などを行いやすい金融環境が目指された。