日本の銀行はこれからどうなるのか。作家の野口悠紀雄氏は「利鞘を稼ぐビジネスモデルは限界だ。しかし、銀行という業種には『マネーのデータ活用』という大きなポテンシャルがある」という――。
※本稿は、野口悠紀雄『データエコノミー入門 激変するマネー、銀行、企業』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
預貸金利鞘という銀行のビジネスモデル
近代日本の金融の歴史を振り返ると、戦前の日本では、直接金融の比重が高かった。これは、株式や社債などによって金融市場から資金を調達する方式だ。それが第二次世界大戦中に、軍需産業に資金を集中させるため、銀行を中心とする間接金融への転換が図られた。銀行が預金を集め、それを企業に貸し出す方式だ。
戦時中にできあがったこの間接金融システムが、戦後の経済成長の中で発展した。これは、長期信用銀行と都市銀行を中心とする金融システムで、産業資金の供給に重要な役割を果たした。銀行業は、戦後の日本の経済成長を支える重要な産業であったのだ。
高度成長期には、企業の旺盛な資金需要があった。これに対して貸出を行なうのが、銀行の役割だった。その原資は、預金だった。銀行のビジネスモデルは、低コストで預金を集め、それを企業に貸し出し、預金と貸出の利鞘を稼ぐという構造だった。
銀行は、支店網を基礎として運営されてきた。全国津々浦々まで銀行の支店網が設置され、国民から「預金」という形で資金を調達した。これは、「ブランチバンキング」と呼ばれるビジネスモデルだ。全国銀行の預貸金利鞘は、1970年代には3%程度であった(「わが国金融機関の低スプレッド」みずほリポート、2003年)。