マネーのデータで日本再生を図れ

では、日本ではビッグデータの活用はできないのだろうか? 「データの世紀」と言われる時代において、日本は指をくわえて巨人たちの戦いを見ているしかないのか?

そんなことはない。現在の日本が、ビッグデータの活用において世界の潮流からはるかに取り残されているのは事実だ。しかし、だからといって、現在のような状況がいつまでも続くとは限らない。遅れを挽回する可能性は、決してないわけではない。

ビッグデータに関する状況は、いまも日々変わっている。ビッグデータの将来を予測することは、非常に難しい。これまでの勝者が没落するかもしれないし、新しい可能性が突然開けるかもしれない。現在では想像もつかないような変化がこれから起こる可能性は、十分ある。

「情報銀行」という新しいビジネスモデル

日本でビッグデータを活用する形態の一つとして、「情報銀行」というものが考えられている。これは、利用者の同意を得て個人データを預かり、企業に提供するサービスだ。2017年に個人情報保護法が改正されたことによって、可能になった。

すでにいくつかの試みが始まっている。例えば三菱UFJ信託銀行は、2021年7月、情報銀行のサービス「Dprime」を始めた。個人が提供するのは位置情報や資産情報など。名前や住所など個人を特定できる情報は、隠したままにする。対価として、企業の新サービスや割引券などを受け取れる。2年後に100万人の利用を目指す。

しかし、これが将来、どれだけ収益性のある事業になるかは、必ずしも明らかではない。まず、どれだけの人や企業がデータを提供してくれるかが分からない。これまでのビッグデータは、自動的に、かつ無料で集められてきた。このようなものでないと、大量のデータを集めるのは難しいと思われる。情報銀行の方式だと、データが十分集まらない可能性がある。第二に、情報銀行が提供する情報に対して、どれだけの需要があるのか、見通しがつかない。