新型コロナウイルスは、子供たちの生活に大きな影響を与えた。行事の中止や縮小もその一つだ。小児科医の森戸やすみさんは「子供たちはさまざまな体験の機会を失ってしまった。子供の感染の7割は家庭内感染のため、まずは大人が対策をしてほしい」という――。
運動会の日、青空にはためく各国の国旗
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現段階では子供が重症化することは少ない

新型コロナウイルス感染症が話題の的になって久しく、そろそろ「新型」というほどは新しくなくなってきましたね。そして、この2年の間にわかってきたことがあります。次々と変異株は出ているものの、現段階で子供は重症化することが少ないということです。

日本では今まで、新型コロナウイルスによって、20歳以下で亡くなった人はいません。コロナウイルスが猛威を振るっているアメリカでも、小児の入院や死亡率は低くそれぞれ5.2%、0.04%でした(日本小児科学会「小児の新型コロナウイルス感染症の診療に関連した論文|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY」)。イギリスも18歳未満の死亡は200万人に1人です(BBCニュース「新型ウイルスによる子供の死亡、極めてまれ 200万人に1人=英研究」)。若い人、特に子供だと、感染しても無症状のままである場合も多いのです。

その理由は推測にすぎませんが、子供は新型コロナウイルスに対する感受性(※かかりやすさのこと)が低いからだといわれています。コロナウイルスは、その表面上にある突起がヒトの細胞膜上にあるACE2受容体にくっつくことによって、体内に入り込みます。子供は、このACE2受容体の遺伝子がまだ十分に働いていないから、感染者が少ないと考えられているのです。

「対策は必要ない」とは言い切れない

ただし、リスクがないわけではありません。特に基礎疾患(持病)がある場合は重症化しやすいのです。ごく稀にしかない子供の死亡例は、ほとんどが基礎疾患のある場合でした。また、新型コロナウイルス感染症にかかってしまったら1歳未満は具合が悪くなりやすいですし、今後出てくる変異株によっては「子供は絶対に重症化したり亡くなったりしないから、対策は必要ない」と言い切ってしまうのでは認識が甘いでしょう。

2021年夏の日本の第5波は特に若い人にも感染が広がり、20代でも入院治療を必要とする感染者は1万人を超えました。現在までに20代だけで25人が亡くなっています(厚生労働省「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」) 。

今話題となっているオミクロンは、比較的軽症で終わるのではないかと言われていますが、これはウイルス変異が原因の特性なのか、世界中で新型コロナウイルスワクチンを受けている人が多いことが原因なのかなど詳しいことはわかっていません。これからオミクロン株が多くの子供に感染した場合、どのようになるかは不明です。