「手作りだからいい」「買ってきたからダメ」とは言えない
子供の食事に、大変さを感じている親は多いものです。日本の保護者は総じて真面目で、大人だけなら「まあ適当でもいいか」と思えても、子供がいるときちんと用意しないと、と思ってしまいがちですね。しかも「子供のために手作り料理を出さないと」「美味しくて栄養のある食事をしっかり食べさせないと」という世間からの無言の圧力を感じることがあるからだと思います。
特にその重圧は、お母さんに向けられがちです。いまだに手作り料理こそが「愛情」の点でも「栄養」の点でも最良だと信じられていたり、さらにそういった個人的な価値観を押し付けられる場合があるのです。実際に少し前、幼児を連れた女性がスーパーかどこかの惣菜コーナーでポテトサラダを手に取ったところ、見知らぬ高齢男性から「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われて俯いたのを目撃した人が、その状況をツイッターに投稿して、ひどい話として話題になりました。本当にあり得ない言動でしょう。
こういった世間からの圧力があると、親は忙しかったり疲れていたりして料理をしたくないときに罪悪感を持ってしまいがちです。時間や体力、気持ちなどに余裕があって、お父さんでもお母さんでも本人がしたければ、料理をしたらいいと思います。手作りなら自身や家族の好みにできるし、家庭の味ができるのはいいことですし、塩分や油分なども控えめにできるかもしれません。
でも当然ですが、お弁当やお惣菜、冷凍食品などを買ってきても問題ありませんし、外食しても構いません。手作り料理でも、買ってきた料理でも、それぞれに栄養バランスや材料などがいいかどうかは異なりますが、どの種類だからダメということはないでしょう。手作りだと栄養価がより高かったり、より安全だったりするというものでもありません。
生後5〜6カ月からは離乳食が必要
子供の食事(離乳食)は、生後5〜6カ月にスタートする必要があります。母乳は赤ちゃんにとって、シロップで補うビタミンK(※1)を除き、ほぼ「完全栄養食品」です。でも、生後5〜6カ月頃になると必要な栄養が増えることで、母乳だけでは補えなくなります。
※1 ビタミンKが不足すると、消化管から出血する「新生児メレナ」や頭蓋内出血を起こしやすくなるため、1カ月検診までにビタミンK2シロップを3回飲ませます。
ですから、離乳食が進まないと、例えばビタミンD、カルシウム、鉄分が不足して、ビタミンD欠乏症、低カルシウム血症やくる病になることも。これらの病気は、栄養状態の悪かった過去のものと思われていたにもかかわらず、近年報告が相次いでいます。また「母乳性貧血」という言葉があるように、離乳食が進まずに母乳だけを飲んでいる場合は貧血になることもあるのです。ですから、まずは正しい時期に離乳食を始めることがもっとも大事です。