小児科に子供を連れてくる父親が増えている
その昔、小児科外来にお子さんを連れてくる保護者といえば、ほとんどがお母さんでした。土曜日になると、たまにお父さんがお子さんを連れてくることもありましたが、とても少数派。お父さんに、お子さんの症状や来院理由などをお聞きしても「妻に聞かないとわかりません」などと、何も答えていただけないことも多かったのです。お母さんに「土曜日なんだから連れていって」と言われて、ただ来院されていただけだったのかもしれません。
ところが、10年前くらいから小児科外来にお子さんを連れてくるお父さんが明らかに少しずつ増えてきました。しかも、お子さんの症状や来院理由、咳や鼻水や排泄の状況、食欲の有無、夜は眠れているのかどうかなども、詳しく話してくださるので、とても驚きました。また、小さなお子さんの場合は膝に乗せて診察しやすいようにしてくださったり、予防接種の時は腕を出してくださったり、その手慣れた様子から普段からしっかり子育てされていることがうかがえます。
さらに最近は、もっと顕著です。「いつもなら夜中は授乳する午前3時頃に1度だけしか起きないのに、昨日はずっと咳をしていて、あまり眠れていませんでした」とか「今の体重は12.3kgです」などと教えてくださるお父さんがたくさん増えて、小児科医としてはとても助かります。スマホで生活記録をつけて、ご両親で共有されている方も多いですね。
日本は「妻」の家事・育児負担が大きい
しかし、日本ではまだ女性が子育てや家事を担うことがほとんどです。その程度は、他国に比べて突出しています。6歳未満の子供を持つ夫婦が、家事や育児にどのくらいの時間を使っているのかを国際比較した表があります。日本、アメリカ、ヨーロッパでは1日平均8時間を夫婦で分担しているようです。そんななか、日本だけが妻の家事・育児関連時間が7時間34分と突出して長く、反対に夫の時間は1時間23分とあまりにも短いのがわかります。
そもそも、日本は労働時間が長いことも問題です。成果よりも頑張ったかどうか、どのくらいの時間をかけたかなどが重視される文化がありますね。また仕事自体は終わったのに、上司や同僚の手前、早く帰れないということもよくあります。最近は「働き方改革」が推奨されていますが、結局はタイムカードを押さずに休日出勤している、サービス残業しているという話も聞きます。
ちなみに私たち医療者の業界も出遅れています。例えば、交代勤務において申し送りをしたり準備をしたりする時間が時間外労働にカウントされない医療機関があります。また医師に限って言えば、1日勤務をした後に当直で夜中も働き、そのまま翌日も夕方まで勤務していることがあるのです。時間外労働の上限を遥かに超えて働く医師が多いのは当然の成り行きでしょう。