充実しているのに利用されていない日本の育児休業制度

そこで日本政府は、この状況を改善するために「育児・介護休業法」を改正しました。2022年4月からは育児休業を取得しやすくするために、事業主は育児休業・産後パパ育休に関する研修を行ったり、相談窓口を作ったりしなくてはいけません。また、妊娠・出産を申し出た本人やその配偶者に対して、育休の意向を聞かなくてはいけません。これは有期雇用労働者に対してもそうです。

そして当然、育休を取得する女性や男性に対して「男が育休を取るなんて迷惑だ」などというハラスメントをしてはいけません。育休取得状況の公表も義務化されましたが、これは従業員数が1000人を超えるような大きな会社だけです。また、育休が子供の出生前・出生後だけでなく、その後にも取れるようになりました。

実は日本の育児休業制度は、他の先進国に遜色のないほど充実しているのですが(※2)、制度としてあるということと、実際に利用できる人が多いということは別の問題だったわけです。今回の法改正で、やっと実際に利用できる人が増えることが期待されます。日本の少子化対策は急務ですし、女性ばかりに負担がかかる現状は改善しないといけません。女性を多く雇用する事業主にばかり育休制度を徹底させたら、会社は男性ばかり採用し女性は敬遠されてしまいます。男性を多く雇っている会社も、育児を支援する必要があるのです。

出勤する夫を玄関で赤ちゃんを抱いて見送る妻
写真=iStock.com/itakayuki
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夫の家事・育児時間が長いほど、妻が仕事を続けている

2017年前後に出産をした女性のうち、約5割が出産・育児によって退職しています。その理由で一番多いものは「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた」というものでした(※3)

実際、夫が平日に「家事・育児時間なし」の家庭では、半数以上の女性が仕事を辞めるか転職しています。妻にだけ負担が偏っているからです。夫が「4時間以上、家事・育児時間あり」と答えた家庭は、妻の75%が出産前と同じ仕事ができています(※2)。第2子以降の出生割合も、夫が家事・育児の時間が長いほど高いのです。

つまり、長時間労働を改め、男女ともに育児休業を取ることができたら、母親のワンオペ育児が減って、第2子以降を望む家庭も増えるでしょう。個々の家庭にとっていいだけでなく、女性の離職率が下がり事業主にもいいことです。