スマホは子育てに悪影響を与えるのか。小児科医の森戸やすみさんは「スマホ育児批判に明確な根拠はない。現時点で因果関係がわかっているのは、視力の低下だけだ」という――。
赤ちゃんを抱っこしながらスマートフォンを操作する女性
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今やスマホは生活必需品

「スマホ育児」という言葉を聞いたことはありますか? 妊婦さんや子育て中の親がスマホ(スマートフォン)を使うこと、ならびに小さな子供にスマホを使わせることを批判的に表した言葉です。こうしたことが広く言われていると、根拠の有無に関係なく、ご自身がスマホを使うこと、そして子供に使わせることを後ろめたく感じるかもしれません。

しかし特に子供が小さいと、保護者は忙しい生活のなかで細切れの時間しか取れなくなりがちです。手間暇をかけた丁寧な暮らしをしたいと思っても、スマホで手配可能なことしかできないときも多いでしょう。

子供を寝かしつけているときに洗剤やおむつのストックがないことを思い出し、スマホで買い物リストを作成したり、その場でネットスーパーで注文したり。電子化された保育園の連絡帳を書いたり、ニュースや育児情報を見たり、ネットバンクで振り込みをしたり、仕事の連絡をしたりするのにもスマホを使うことがあるでしょう。もちろん、ゲームやSNSをするのも咎められることではありませんが、画面を見ているからといって遊んでいるとは限りません。

つまり、今やスマホは生活必需品であり、インフラのようなものですね。子育て中に限らず、運転中や歩行中に使うなど危険な使い方をしなければ、非難されることはないでしょう。また子供を放置して一日中スマホを見続けるという親はなかなかいませんし、もしもいたとしたら何らかの問題を抱えているだろうと推測されるので非難ではなく支援が必要です。

「創造のハードル」を下げて子供の体験を豊かにする

大人にとってのスマホの利点は前述のとおりですが、実は子供にとってもたくさんのメリットがあると私は思っています。スマホやタブレット端末、パソコンなどのデジタル機器には、絵本を見る、パズルやゲームをする、動画を見るという使い方以外にも、用途がたくさんあります。使い方によっては、さまざまな「ギャップ」をうめてくれるツールになるのではないかと思うのです。

慶應義塾大学教授の石戸奈々子氏は、著書『賢い子はスマホで何をしているのか』において、デジタル機器のよいところは創造・効率・共有が可能なところにあるとしています。スマホもパソコンも、ただ受け身で楽しむだけでなく、誰かに反応を返したり自分でやってみたりするという双方向性があり、何かを作ること――つまり創造のハードルを下げるのです。