何らかの障害がある子供の学びの助けになる

このほかタブレット端末を利用すれば、学習障害や身体障害のある子供の学習や学びを助けることもできます。例えば、言葉を理解はできるけれどさまざまな理由で書くことができないならば、黒板の画像や授業の動画を残せばいいでしょう。識字障害がある場合は、文章を読み上げてくれるソフトを利用することができます。あるいは計算だけができない場合は、計算のみをソフトに頼ればいいでしょう。絵を描くことも、音楽も、他のこともできます。デジタル機器タブレット端末を使って適切なサポートが得られれば、さまざまな能力を伸ばすことができますね。

リビングでタブレットを使用する子供
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです

日本では、歩くことが困難な子供に対して、自分の足で歩く訓練をすることが重視されがちです。まして、車椅子を使って遊んだりすることはよくないことのように思われがちです。海外では、車椅子などを使って本人が移動したいところに、行けることが重視されるようです。

子供にとって大事なことは、やりたいことができるようになること。機器の助けを借りることは避けるべきことではなく、むしろ大人が積極的にすすめてあげるべきことではないでしょうか。

「スマホ育児」批判に明確な根拠はない

以前から私は、子育て中の人や子供自身がスマホを使うことを制限するべきではないというコラムを書いてきました(朝日新聞アピタル「子どもはスマホとどうつきあうべきか」「スマホは育児の命綱」)。また昨年は、第30回日本外来小児科学会のシンポジウム「スマホ・デジタルメディアとの付き合い方」にて「スマホが豊かにする子育て」という題名で講演もしました(WEZZY「小児科医・森戸やすみさんが『スマホ育児』批判のおかしさを指摘し続けている理由」)。

それらのなかで、日本小児科医会の「スマホに子守りをさせないで!」という啓発事業を取り上げて批判しています。この活動は“スマホを使うと、こんなに恐ろしいことが起こる”と主張して、親たちや子供たちにスマホを使わないように呼びかける内容でした。例えば「スマホの時間 わたしは何を失うか」というポスターには、「体力」「コミュニケーション能力」を失うと示唆され、「脳にもダメージが‼」「スマホを使うほど、学力が下がります」などと恐ろしいことが書かれています。

当然ですが、これには明確な根拠はありません。だいたい読書に没頭して一切運動しなくても体力は下がるでしょう。スマホでもコミュニケーション能力は上がりそうです。脳にダメージを与えるという証拠はなく、スマホを使うほど学力が下がるという調査結果はあるものの反対の調査結果もあります。ですから、ただ昔と違う物を使うのはダメだという非合理的な考え方に過ぎません。私は若い親たち・子供たちは、小児科医会の一部の医師たちが考えるよりももっと賢く、程よく利用できるだろうと思っています。