子供を愛していても、睡眠をとらずにはいられない
子育てをしていると、ひどい言葉を耳にしたり目にしたりすることがあります。「子供がいるために困った境遇になっても、勝手に産んだのだから自己責任」、「わざわざ産まなければつらい目に遭わなかったのに、なんで産んだの?」といったようなことです。
例えば、SNSなどで赤ちゃんのいるお母さんが「眠いときに寝たい」「一人の時間がほしい」と愚痴とさえいえないようなことを書いた時に「母親なのに寝ようとするなんて人としてダメ」「自分が産んだんだから自己責任」「そんなふうに言うなら産まなければいい」というコメントがついたりすることがあります。しかし、どんなに子供を愛していても、睡眠をとらずにはいられませんし、一人の時間は誰にでも必要ですから、あまりにも無茶苦茶というものです。
他人から「産まなければいい」と言われる必要はない
子供を産んだからといって、当然の行動を自粛しなくてはいけないなんてことはありません。睡眠をとったり、出掛けたりする権利は、当たり前のことですが、誰にでもあるのです。また、産んで初めてわかる子育てのつらさもあるのですから、子供のいないところで愚痴を言ったくらいで、他人に「産まなければいい」と言われることはありません。産まなければよかったとか、子供がかわいくないということではなく、ただしんどいと感じる時期や事柄もあるというだけ。
子供がいなくても、人は急に病気になったり、職を失ったりすることもあるでしょう。同様に、子育て中にもさまざまなことが起こり得ます。思いがけず、産後うつや育児ノイローゼになったりすることもあれば、病気になることもありますし、経済的に困難を抱えることもあるわけです。それを全部自己責任とするのはおかしいのではないでしょうか。そういう意見の人たちは、生まれてすぐから自分のことは自分ででき、これからも他人に面倒をかけないというのでしょうか。
子育てする親が「罰」を受けるような政治と社会
こういった「子育て自己責任論」の背景には、子供に優しくない政治と貧困があります。2020年12月には、一律で給付されている児童手当の廃止が決まりました。子供を産み育てることには多額のお金がかかり、また賃金も上がらないままなのに、国さえもが「自分で望んで子供を持ったのだから、そのくらい覚悟の上だろう」と言わんばかりです。現在は年収が多い世帯が児童手当廃止の対象ですが、徐々に年収の上限が下がって多くの人が児童手当を受けられなくなるのではないかと言われています。国が子育てを軽視しているありようが、子育てに厳しい風潮を作っている面もあるでしょう。