子育ては苦労の連続だ。少しでも親の負担を減らす方法はあるのか。2人の娘を育てる小児科医の森戸やすみさんは「小児科医と子育てを両立していて、日本はあまりにも子育てがしにくい国だと感じた」という——。
電車の座席に座る妊婦
写真=iStock.com/maroke
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小児科医と娘2人の子育てを両立してきた

はじめまして。小児科医の森戸やすみと申します。私は、医師免許をとってから大学病院で研修をし、さまざまな病院やクリニックの小児科で働いたり、NICUで新生児の集中治療にたずさわったりしたあと、東京都内の小児科クリニックで働いています。

そのあいだに娘2人を産み、今も子育ての途中です。誰にとってもそうであるように仕事と子育ての両立は大変ですが、私の仕事は出産や子育てに役立ちました。さらに出産や子育ては、私の仕事の妨げになるどころか、患者さんやその親御さんへの理解を深める上でとても役立ちました。子育てと仕事が相乗効果のあるものであるという点は、とてもラッキーだったかもしれません。

たとえば、診察室でお父さんやお母さんに「赤ちゃんが顔を真っ赤にして手足を交互に伸ばしてムキーっと言うんですが、大丈夫ですか?」と聞かれたときも「ああ、うちの子もやっていたあれね」と思いますし、乳児の授乳とおむつ替えに追われてほとんど眠れない状態を経験しているので、親御さんたちにとって何が現実的なアドバイスなのかわかります。

そんな仕事と子育てをしながらの日常で、最近よく考えるのは、日本はあまりにも子育てをしにくい国ではないか、いうことです。そこで「子育てをしにくい」と思う原因を考えたところ、以下の5つが思い浮かびました。ひとつずつ、お話していきましょう。

①子育てに寛容でなく厳しい風潮がある

私は第2子の妊娠中、ギリギリまで働いていましたが、ある朝、通勤電車で目の前の座席が空きました。お腹は大きくて重いし、足も疲れていたのでラッキーだと思った途端、スーツ姿の男性が横入りして座席を取られました。もちろん、座席を譲ってくれる人もいましたが、同じような体験をしたことのある妊婦さんは少なくないでしょう。

また、三つ子をワンオペで育てていたお母さんが子供を傷つけてしまった痛ましい事件が起こったときや、ベビーカーでのバスの乗車を拒否された問題が起きたときに、インターネット上では「自分が産んだのだからつらくても自己責任だ」「子供を持ったからには何事も我慢しろ」などといった心ない言葉を発信する人たちがいて「子供を持つことは罪ではないはずでしょう?」と世界に向かって問いたくなりました。

そのほかにも、保育園の建設が近隣住民の反対にあうこと、「公共の交通機関で子供が泣いたら親は申し訳なさそうにするべき」などとSNS上で発信する人もいて、ご自身も子供だったはずなのにと不思議に思います。