新型コロナウイルスの感染拡大は子供たちにどのような影響を与えたのか。不登校や引きこもりの支援を36年以上続けている杉浦孝宣さんは「コロナを理由に休めば欠席扱いにならないという特例が『学校に行かなくてもいい』という気持ちを助長するだけでなく、不登校から立ち直る機会を奪っている」という――。

※本稿は、杉浦孝宣×NPO法人高卒支援会『不登校・ひきこもり急増 コロナショックの支援の現場から』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

母親に励まされた子供
写真=iStock.com/takasuu
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不登校や保健室登校が例年より増えた理由

コロナは不登校やひきこもりを助長しました。例年では夏休みの後、ゴールデンウイークの後など、長期休み明けが一番不登校になりやすいタイミングです。それが、3カ月という例年にない長期間の休校になり、家にいるのが当たり前になってしまった。再開してもオンライン授業だったり、分散登校で行ったり行かなかったりして、家に長時間いる生活が許されてしまう環境になってしまったのです。

こうした環境により、不登校や保健室登校が例年より増えたのです。日本教職員組合の調査では、学校再開後や夏休み明けに不登校や保健室登校が増えたと答えた学校は2割を占めたと報道されています(教育新聞2020年10月12日)。

これに追い打ちをかけたのが、文部科学省の方針です。2020年4月10日、萩生田光一文部科学大臣(当時)は記者会見で、感染拡大の可能性が高いと保護者が判断して学校を休む子どもについて、校長が合理的な理由だと認めれば、欠席として扱わないという見解を出しました。

その後に通知した「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン」では、「臨時休業等に伴い、やむを得ず学校に登校できない状況にある児童生徒等については、各学年の課程の修了又は卒業の認定に当たっては、弾力的に対処し、その進級、進学等に不利益が生じないよう配慮する」と明記されました。

学校に行かない・行けない児童生徒は21万人

これにより、各学校でさまざまな判断がされましたが、休んだ生徒を欠席扱いしない学校がほとんどだったと思います。欠席にならないのであれば、もともと不登校気味の生徒が休んでしまうのは当然でしょう。これにより、不登校が助長され、さらにその状況が見えにくい状態になってしまったのです。

これまで文部科学省では、不登校を「年度間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒」のうち、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、「病気」や「経済的理由」による者を除く)」と定義してきました(令和元年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」より)。

しかし、コロナを理由に休んで欠席にならないのでは、本来不登校として数えられるべき生徒が、不登校にならなくなってしまいます。

つまり、令和2年度の不登校が19万人とされていますが、実際にはコロナ感染回避のための欠席者2万人も不登校と考えられますので、合計すると21万人もの不登校児童生徒がいるのです。