高校の進級・卒業のハードルが大きく下がった

高校では、休んでも欠席日数としてカウントされないことはもっと大きな意味を持ちます。

小学校と中学校は義務教育なので、欠席日数がいくら多くとも進級・卒業できますが、一般的な全日制の高校では、欠席日数が総授業日数の3分の1を超えると、進級・卒業ができません。高校にもよりますが、おおよそ60日休むと、留年(原級留置)の可能性が出てきます。また、60日以内であっても、一つの科目につき3分の1以上の欠席があれば、単位をもらえず、これも留年になります。

これまでの指導経験からいうと、ゴールデンウイーク前後から欠席し始めると、1学期の終わりには留年がほぼ確定してしまいます。留年して1学年下の生徒ともう一度その学年をやらなくてはならないのですから、留年より退学のほうを選択するケースがほとんどとなっています。

しかし、そこへきてのコロナです。休んでも欠席になりません。例年なら進級や卒業ができない生徒が、欠席日数をカウントされていないので、進級・卒業ができてしまうのです。

令和2年度の高校の不登校数は4万3051人で、前年の5万100人よりかなり減っているように見えますが、実際はコロナ感染回避の欠席者9382人がいるので、実質は合わせて5万2433人と増加しているのです。

「君たちは人間以下です」が口癖の担任

実際の不登校のまま進級・卒業ができた例です。

【ユメさんの事例】(現在18歳。不登校状態でもコロナで高校卒業できた後、浪人中)

ユメさんは中学受験をして、毎年東大に10人前後の合格者が出る中高一貫の進学校に入学しました。中学の頃は部活も行事にも積極的に関わり、元気に通っていました。成績も上位で何も問題がなかったといいます。

それが高1になってから、変わってきました。担任の先生は東大出身の先生で、授業中も「こんな問題も解けないと、東大に合格できないぞ」とクラス全員に罵声を浴びせます。ユメさん自身が個人的に怒られたわけではありませんでしたが、常に強いプレッシャーを受ける生活に疲れ、しだいに休みがちになってきました。

指をさすビジネスマン
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

高2になって担任は変わりましたが、その先生も「君たちは人間以下です」というのが口ぐせの先生でした。受験勉強に追い立てられ、人としての尊厳を踏みにじるような言葉ばかり浴びせられて、ユメさんは体調が優れない日が増え、ますます学校を休む日が増えてしまいました。