提案をもらえるなら「今すぐテスラ株を売って寄付する」

では、今、世界で一番お金を持っている人は誰だろうか?

すぐに頭に浮かぶのは、米タイムの2021年のパーソン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれたテスラ創業者のイーロン・マスクだ。EV(電気自動車)で世界を牽引し、宇宙企業スペースXを創業し地球外への人類移住を目指す計画を披露するなど、昨年、何かと話題を提供してくれた人でもある。

ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、マスク氏の純資産は2021年12月中旬時点で2548億ドル(約29兆円)と、今年に入り950億ドル(約10兆8000億円)増加している。ちなみに純資産のランキングは、2位がアマゾンの創設者であるジェフ・ベゾス、3位がLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトングループ会長のベルナール・アルノー、4位がマイクロソフト創業者のビル・ゲイツと続く。

2021年10月、国連の世界食糧機構(World Food Program)の責任者であるデビット・ビーズリー氏が、何百万人もの人々を飢餓から救うため、マスクやベゾスのような億万長者に対して60億ドルを寄付するよう呼びかけるツイートをし、ちょっとした話題になった。

「世界一の富豪としてジェフ・ベゾス氏を超えたイーロン・マスクさん、おめでとう! お祝いに、一生に一度のチャンスを差し上げましょう。4200万人の飢餓に苦しむ人々を、たった66億ドルで救えるんですよ。チャンスの締め切りはもうすぐです。人々の命と同じように」

そのツイートを受け、マスク氏はWFPに対し、60億ドルで世界の飢餓を解決する方法を説明するよう求めた。彼は、国連が飢餓救済のためにお金をどのように使うのかを正確に示すことができるのであれば、「今すぐテスラ株を売って寄付する」とツイッター上で返信したのだ。

すると、今度はWFPが、「A one-time appeal to billionaires(億万長者への一度限りの訴え)」という提案を発表。ビーズリー氏が、「この飢餓危機は緊急で前例のないものだが、回避可能だ。イーロン・マスクさん、あなたは明確な計画を求めた。ここにある! 命を救うことを真剣に考えているあなたや他の誰とでも話す用意がある。2022年の飢饉を回避するためにお願いしたいのは、66億ドルだ」というツイートをした。この提案には、世界で最も裕福な人々から寄付された数十億ドルについて、食料とその輸送に35億ドル、現金と食料バウチャーに20億ドルを費やすと書かれている。

結局その後、マスク氏がWFPに寄付したかどうかは発表されていないが、「これほど世界中で飢餓に苦しむ人がいるのだから、億万長者にはもっと寄付してほしい」とWFPが言う気持ちはわかる。

ただ、マスクのような人は、世界中の人から寄付や投資をしてほしいとせがまれているだろうし、2012年には、すでにギビング・プレッジ(Giving Pledge)という「生前もしくは死後に自身の資産の半分以上を慈善活動に寄付する」ことを宣言している。2001年にはマスク財団も設立し、AI開発などにも寄付している。

彼のような経営者は、自分が次世代のビジネスに多額のお金を投資すること自体が、人類への多大なる貢献になると思っているのではないだろうか。