2020年、世界の「人助け」は過去最高に

世界の寄付や慈善活動に関する面白い調査もある。イギリスの慈善団体「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」が毎年発表するWorld Giving Index(世界人助け指数)という報告書だ。

これは、アメリカの市場調査会社ギャラップが行った114カ国12万1000人超の人々の電話インタビューのデータをベースにした報告書だ。インタビューの質問は、世界金融危機後の2009年から「この1カ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」「この1カ月の間に寄付をしたか」「この1カ月の間にボランティアをしたか」という3つから成り立っている。

2021年に発表されたレポートには、「2020年、世界では、過去最高の数の人が見知らぬ人を助けた」とあり、その数は世界の成人の55%(約30億人以上)にのぼるという。また、2020年は、過去5年間に寄付をした人の合計よりも、多くの人が寄付をし、ボランティア活動の水準も比較的高かったそうだ。コロナ禍という未曽有の世界的危機が、人々を助け合いの方向に導いたのかもしれない。

国別ランキングでは、前回トップだったアメリカに替わり、1位にランキングしたのがインドネシア。決して裕福というわけでもないこの国では、喜捨を重視するイスラム教の教えもあり、2020年には10人中8人超が寄付を行い、ボランティア活動をした人々は世界平均の3倍を超えたそうである。その助け合いの精神には感服する。

中国は急浮上、日本は最下位

ちなみに前回2019年に発表された過去10年間の総合ランキングで、最下位だった中国は、今回95位に浮上。「ボランティアをしたか」という項目では、2009〜2019年の10年にわたり最下位だったが、今回の調査では73位に上昇した。

順位が上がった理由としては、2016年に導入された「チャリティー法(中国慈善法)」によって、人々が寄付をしやすくなったことが寄与したという。経済的に裕福な人が増えているのも影響しているかもしれない。

それでは、総合順位最下位の114位はどこか?

答えは日本である。前回の107位からさらに下がってしまった。

「日本は歴史的に、先進国としてはめずらしいほど市民団体が少ない。チャリティーの規則は複雑で、国の対策に対する期待が高く、組織化された非営利団体の登場は比較的新しい現象だ」とレポートは分析する。

調査項目の1つ「見知らぬ人を助けたか」という点においても、日本は114位と最下位だった。あまりにも残念だ。

人々が人助けを積極的に行う国は、宗教的や文化的な影響だけでなく、法整備も大きく影響している。中国が一例だ。日本の場合は、このレポートでも指摘されたように、「人々の生活を助けるのは国の仕事」だと、「お上」に頼りすぎる傾向はなかっただろうか。国がやるべきこともたくさんあるが、国の制度からこぼれ落ちて苦しむ人は多い。個人レベルでできるサポートはたくさんある。この国際ランキングをみて、皆さんはどのように感じただろうか。

渋谷スクランブル交差点をハチ公口からみた風景
写真=iStock.com/Juergen Sack
※写真はイメージです