10月31日には衆議院選挙の投開票が行われる。海外のメディアでは、9月に行われた自民党の総裁選挙から衆議院選挙に至る日本の政治を、どのように報道しているのだろうか。ジャーナリストの大門小百合さんがリポートする――。
衆議院が解散し、拍手する岸田文雄首相=2021年10月14日、国会内
写真=AFP/時事通信フォト
衆議院が解散し、拍手する岸田文雄首相=2021年10月14日、国会内

「ミスター現状維持」「影響されやすい人」

「あるアナリストは彼をこう呼ぶ。『ミスター現状維持(Mr. Status Quo)』、もう一人のアナリストは、『変わりやすい(mutable)』、いや、『人に影響されやすい(malleable)人』とまで言う。3人目のアナリストは、『大きく失敗した経験がない人だ』という」

これは、9月末の岸田文雄首相誕生直後に書かれた、フィナンシャルタイムズの社説からの抜粋だ。もちろん、岸田首相のことだが、総裁選挙からこれまでを見ていると、この社説で表現された岸田像は、結構当たっているのではないだろうか。

10月31日には、いよいよ衆議院選挙が行われる。コロナ対策、経済政策、所得分配などが選挙の争点として上がっている。もちろん、それも大事。しかし、海外メディアの論調を見てみると、日本の政治構造の問題点について、あらためて気づかされることが多い。そこで、総裁選挙から現在にいたるまでの最近の日本の政治状況を、海外のメディアはどう報じていたかを紹介しながら、日本政治の根本的な問題について考えてみたい。

日本の政治は「ロシアやイラン」レベル

「『最初から結果が見えている選挙』というと、ロシアやイラン、香港などを思い浮かべる人が多いと思う。しかし、議会制民主主義を採用し、世界第3位の経済大国である日本では、1955年以来、4年間を除いてずっと同じ政党が政権を握っている」と報じたのは、ニューヨークタイムズ。“Why the Governing Party election is the main event in Japan(なぜ与党内の選挙が日本ではメインイベントになるのか)”というタイトルの記事の冒頭だ。

なんと、ロシアやイランと同列の扱いである。政権交代がなく、1つの党が何十年も政権の座に居続けるということが、いかに民主主義国家として、ほかの先進国から奇異に映っているか、日本人は気付いているだろうか。