「ミスター現状維持」「影響されやすい人」
「あるアナリストは彼をこう呼ぶ。『ミスター現状維持(Mr. Status Quo)』、もう一人のアナリストは、『変わりやすい(mutable)』、いや、『人に影響されやすい(malleable)人』とまで言う。3人目のアナリストは、『大きく失敗した経験がない人だ』という」
これは、9月末の岸田文雄首相誕生直後に書かれた、フィナンシャルタイムズの社説からの抜粋だ。もちろん、岸田首相のことだが、総裁選挙からこれまでを見ていると、この社説で表現された岸田像は、結構当たっているのではないだろうか。
10月31日には、いよいよ衆議院選挙が行われる。コロナ対策、経済政策、所得分配などが選挙の争点として上がっている。もちろん、それも大事。しかし、海外メディアの論調を見てみると、日本の政治構造の問題点について、あらためて気づかされることが多い。そこで、総裁選挙から現在にいたるまでの最近の日本の政治状況を、海外のメディアはどう報じていたかを紹介しながら、日本政治の根本的な問題について考えてみたい。
日本の政治は「ロシアやイラン」レベル
「『最初から結果が見えている選挙』というと、ロシアやイラン、香港などを思い浮かべる人が多いと思う。しかし、議会制民主主義を採用し、世界第3位の経済大国である日本では、1955年以来、4年間を除いてずっと同じ政党が政権を握っている」と報じたのは、ニューヨークタイムズ。“Why the Governing Party election is the main event in Japan(なぜ与党内の選挙が日本ではメインイベントになるのか)”というタイトルの記事の冒頭だ。
なんと、ロシアやイランと同列の扱いである。政権交代がなく、1つの党が何十年も政権の座に居続けるということが、いかに民主主義国家として、ほかの先進国から奇異に映っているか、日本人は気付いているだろうか。