引け目を感じたときに思い出す店長の一言

最初の配属先は、富山県内でオープンした新店舗だった。当時は女性社員が少なく、圧倒的に男性が多かった。商品の搬入や陳列など肉体労働も懸命にこなしたが、当時は女性だからと任されない業務もあった。引け目を感じていたら、店長に諭されたという。

「どんな仕事であっても、男性、女性に関わらず、この人にはこれが向いているという適性がある。あなたはパートさんとコミュニケーションをとること、お客さまの不満を聞いて解決していくことが他の人よりうまくできると思う。だから自分がやるべきことをちゃんとやっていけばいいと言われたのです」

千野さんはさらに人事部など異動を重ね、入社7年目に品質業務改革室へ。その半年後には、同部署のグループマネジャーになった。そこは自社商品の品質改革に取り組むため新設された部署で、部下4人は全員店長を務めてきた男性の先輩ばかり。店長経験もマネジメント経験もない自分にできることがあるのか……不安がつのる中であの店長の言葉を思い返した。

「私がやるべきことは何なのかを必死で考えました。メンバーの中にはどちらかというと研究職で突き詰めて検証するのは得意でも、他部署との交渉があまり上手ではない方もいる。ならば私は皆さんが苦手なところをやっていこうと。できるだけ先輩方が支障なく仕事できるように努めていました。マネジャーというよりもチームリーダーのような感じでしたね」

社内を騒然とさせた“土鍋事件”

品質業務改革室に異動してほどなく、マネジャーになる前に、千野さんは「土鍋事件」の対応も担当していた。国内のメーカーから仕入れた土鍋から有害物質が検出され、全部回収する事態になった事件。コールセンターには電話が殺到し、部のメンバーも対応に追われた。一方、他の商品も本当に大丈夫なのかと問い合わせが相次ぎ、安全性を確認する検査を徹底する。この事件を機に仕事に対する姿勢も大きく変わったという。

「お客さまはニトリを信頼して買い物をしてくださっている。どこから仕入れているかに関わらず、販売している企業としての責任をいっそう意識するようになりました」

ニトリでは90年代半ばから海外自社工場を稼動させ、世界各国から調達した原材料を使用して製品化している。さらに国内メーカーで製造するものも品質管理を徹底し、低価格、高機能な商品提供に取り組んできた。