日本外交そのものが持つ曖昧さ
日本政府は、笹川会長の行動を、政府とは無関係な出来事として扱い、一切のコメントを避けている。国軍メディアから、市民派のSNSに至るまで、ミャンマー人たちが笹川会長を「日本政府特使」と呼んで、追いかけているのを知りながら、無関係を装っている。果たしてこれは戦略的に計算され尽くした協働なのか、見えてこない。
今回の笹川陽平会長の電撃訪問によって、「民間外交官」の「フィクサー」が「パイプ」として役割を持つことの繊細さが顕在化した。だがそれは、日本外交そのものが持つ曖昧さとも結びついている。(後編に続く)
(*1)日本財団等の活動については、伊藤隆(編)『ソーシャル・チェンジ 笹川陽平、日本財団と生き方を語る』(中央公論新社、2019年)などが詳しい。
(*2)「笹川三代目を据える『日本財団』の奥の院」(『ZAITEN』2019年2月号、同誌特集班)P.24~25
(*3)高山文彦『宿命の子 笹川一族の神話』(小学館、2014年)P.8
(*4)上記書の著者インタビュー「黒い噂に染められた笹川良一の実像とは?」(東洋経済オンライン、2015年3月7日)
(*5)第129回国会 平成六年四月十九日提出 質問第五号「笹川良一氏、陽平氏親子とモーターボート競走業界並びに財団法人日本船舶振興会に関する質問主意書」(提出者=楢崎弥之助)
(*6)「米国人解放『国軍トップに働きかけた』 ミャンマー入りの笹川陽平氏」(朝日新聞デジタル、2021年11月20日)
(*7)“Daily Briefing in Relation to the Military Coup”, Assistance Association for poritical Prisoners, December 14, 2021
(*8)笹川陽平『外務省の知らない世界の“素顔”』(産経新聞ニュースサービス、1998年)第1章
(*9)「日本財団理事長笹川陽平 緊急インタビュー 食糧危機に直面する北朝鮮の現状とは 北朝鮮日本人妻の一時帰国を実現させるまでの顛末」(『財界』1997年8月26日号)>P.62~65
(*10)「緊急インタビュー笹川陽平・日本財団理事長に聞く 北朝鮮・日本人妻の里帰りはこうして実現した」(『月刊経営塾』1997年9月号)P.42~45
(*11)伊藤(編)『ソーシャル・チェンジ』P.203
(*12)「拉致問題追及で重大疑惑――笹川陽平日本財団理事長 金正日への衝撃密書」(加賀孝英、『文芸春秋』1998年6月号)P.138~150
(*13)“Arakan Army releases 15 captives arrested during armed conflict with Myanmar military”(Myanmar Now, Nov 17, 2021)