もしトランプ氏がアメリカ大統領に再選した場合、日本にはどんな影響があるのか。国際政治学者の篠田英朗さんは「トランプ第2次政権が成立した場合でも、『FOIP』や『クアッド』に象徴される外交路線を大幅に変更することは考えにくい。それでも、さらに具体的な内実については、大幅に不透明な要素が残る」という――。
ミシガン州の支持者集会で演説するトランプ元大統領(2024年4月2日)
写真=AFP/時事通信フォト
ミシガン州の支持者集会で演説するトランプ元大統領(2024年4月2日)

「FOIP」も「クアッド」も第1次トランプ政権時代に生まれた

トランプ氏は、大統領時代に、日本の右派層に人気があった。その大きな理由の一つは、対中政策であっただろう。前任者のオバマ大統領は、中国との間の超大国間対立を避ける穏健な態度をとっていた。トランプ大統領は、それを変更して、厳しい姿勢で中国との関係を見直す路線をとった。

日本の安倍首相が提唱していた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の考え方に賛同し、もろもろの政府文書にその概念を盛り込む際にも、トランプ政権は中国に対する警戒心を隠さない態度をとった。アメリカ・日本・インド・オーストラリアという中国を取り囲む4カ国が、「クアッド」として外交協議を継続・実施する仕組みを作り出したのも、トランプ大統領時代の2019年からだ。

「FOIP」と「クアッド」はバイデン大統領も継承したため、党派を超えたアメリカの外交路線となった。トランプ大統領が確立したアメリカの外交政策の指針は、珍しい。これについては日本も当事者として加わっており、関心を持たざるを得ない。

このような経緯を考えると、トランプ第2次政権が成立した場合でも、「FOIP」や「クアッド」によって象徴される外交路線を大幅に変更することは考えにくい。それでも、さらに具体的な内実については、大幅に不透明な要素が残る。

しかし、たとえ予測することがほとんど不可能であっても、日本にとってのアメリカの重要性を考えれば、さまざまな可能性は検討しておかざるを得ないだろう。