マスク氏は2週間に1度の打ち上げが最低ラインになるとの見込みを示し、これが達成できなければスペースXに破産の可能性があると述べている。レターでは状況が「災害」級であるとも綴っており、「非常に率直なところ災害といえるこの状況から立ち直るため、我々全員が総力をあげる必要がある」と窮状を訴えている。

レター流出受け釈明、問題は「改善している」

レターの外部への流出を受け、マスク氏は補足に追われた。氏は発言の趣旨を変更し、破産はおよそ起こり得ないが絶対にないわけでもない、という立場を示している。

マスク氏はツイッターを更新し、「世界的な景気後退が資金の入手容易性と流動性を枯渇させ、同時にスペースXが数十億(ドル)をスターリンクとスターシップ関連で失い続けたと仮定したとき、それでも破産は疑わしいものの、あり得ないというわけではない」と述べた。

また、別の投稿を通じ、ラプターエンジンの問題は「解決に向かっている」とも述べている。

マスク氏の企業に破産の噂がささやかれるのは、今回が初めてではない。米フォックス・ビジネスは、EVベンチャーのテスラが2008年の年末、倒産の瀬戸際にあったと振り返る。さらに、モデル3の製造問題に襲われた2019年までの2年間にかけ、資金枯渇の危機に直面していた。

リスクの高さは当人も重々承知のようだ。2018年のカンファレンス「サウス・バイ・サウスウエスト」のパネル・ディスカッションでマスク氏は、「さまざまなビジネスチャンスを対象にリスクを考慮に入れた収益予測を行うのであれば、ロケットと(EV)車両の製造は、リストの最下位にかなり近いところにあると私は評価するだろう」と述べ、自身が運営する2社が危険度の高いビジネスを行っているとの認識を示している。

テスラの「生産地獄」当時のマスク氏は、工場に寝袋を持ち込んで寝泊まりするなど、持ち前の熱意で窮地を乗り越えてきた。スペースXが直面する新たな試練への対応が注目される。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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