初めて作った製品で「業界のエリート」入りを果たす

ナスダックに上場するモデルナの株価は2020年はじめから堅調に上昇を続け、最高値を付けた2021年8月9日には2018年12月の上場時と比べて26倍超まで上がりました。

モデルナは上場時にも75億ドルというバイオ・製薬企業としては史上最高の株式公開時の評価額をつけていましたが、今やその時価総額は1370億ドル(約15兆5000億円、2021年10月1日時点)を超え、すでにフランスのサノフィなどを抜き英国のアストラゼネカに迫るなど、世界有数の規模と業績をもつバイオ・製薬企業に肩を並べています(図表2参照)。

まさに、モデルナが「バイオ業界のエリート入り」(Bloomberg 2021年7月14日)したわけです。

モデルナは、2020年期に新型コロナ・ワクチンを販売し売上高を立てるまでは、医薬品やワクチンなど製品販売による売上高はゼロ。新型コロナウイルス・ワクチン「mRNA-1273」はモデルナが初めて販売した製品です。2021年4月時点で先述の国・地域への13億回以上のワクチン供給について契約していることから、その売上高が2021年以降に計上されてくるでしょう。

2019年12月に中国の武漢で最初の新型コロナウイルス感染症の患者が報告されてから、まだ2年程度しか経っていません。それなのに設立からわずか10年余りのベンチャー企業モデルナは、地球規模で深刻な打撃を与えている新型コロナウイルスのワクチンを迅速に開発・製造し、ビッグファーマーと並んで世界へ販売・出荷。モデルナの株価の上昇は、こうしたことを市場が高く評価している証左です。

2020年12月23日。アメリカの国旗にCDCによるModerna COVID-19 Vaccineフォーム
写真=iStock.com/Evgenia Parajanian
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テスラが仕掛けた「業界の破壊と刷新」と重なる

モデルナは「バイオテク界のテスラ」(Bloomberg 2021年月7月17日)とも呼ばれています。

設立から20年も経たないEV(電気自動車)メーカーのテスラは、自動運転など最先端テクノロジーや既存の自動車メーカーにはない開発思想を採用して、次世代自動車産業をリードしています。テスラの株価は2019年終わり頃から上昇を続け、2021日11月2日時点で2020年年初と比べて13倍以上にまで膨れ上がっています。時価総額も同10月25日には1兆ドル(約113兆円)を超えました。

11月2日時点のテスラ時価総額は、トヨタ、VW、GW、フォード、ステランティスなどの世界の名だたる自動車の合計時価総額を大きく上回っています。これは、市場がテスラを、既存自動車業界をディスラプト(破壊・刷新)して自動車産業に新たな領域を切り開くテクノロジー企業として捉えていることを示唆しています。