「mRNAサイエンスでベストになる」ための“10倍思考”とは

モデルナは、立ち上げからの「20年ジャーニー」で「mRNAサイエンスでベストになる」とコミットしています。現在その折り返し地点にいるわけですが、新型コロナウイルス・ワクチン「mRNA-1273」の販売・出荷や供給契約締結によって飛躍を遂げた段階です。そして、ベストになるためのドライバーとして、スケーラビリティを想定した「10倍思考」、データ分析、機械学習、AI、ロボティクスなどデジタルテクノロジーを活用した「プロセスの最適化」、デジタル・インフラの活用による「競争優位性」、および「mRNA業界において最大規模であること」を挙げています。

田中道昭『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(インターナショナル新書)
田中道昭『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(インターナショナル新書)

最後に、バンセルCEOの「10倍思考」に関するインタビュー記事を引用して結びにしたいと思います。

「私は当社が、今後10年間で10倍の規模になると予想しています。この『10倍思考』は、私が経営してきた中でも最も重要な考え方です。私は毎朝オフィスに来るたびに、この事を意識します。人の心の不思議なところは、時間的な制約が厳し過ぎると創造性が失われてしまうことです。10年という時間枠があれば、大きな事を考える余裕が生まれます。

私たちがよく使うもうひとつの考え方は、『もしも魔法の杖を持っていたら』というものです。このようにしてビジョンが合意されると、私たちはこのビジョンとそれを達成するために必要な段階的なステップに向かって、ペダルを逆に踏みます。私たちはこの10年間、毎日この作業を行ってきました」

経営陣がいかにAIを使いこなせるようにするか

「私たちの最大の課題は、文化の希薄化にあります。私たちは素晴らしい技術を持っており、技術力が劣後するリスクはもはや過去のものとなりました。財務的なリスクも今では緩和されています。計算されたリスクを取り、迅速に行動し、データに適応するという、当社をここまで成長させた文化を維持するように努力しなければなりません。私たちの判断は全てデータに基づいて行われるのです」(Pictetのコーポレートサイト、バンセルCEOとピクテ・グループ シニアパートナーのルノー・デ・プランタ氏との対談、2021年7月2日)

「AIの場合、最大の課題は経営層の意識改革です。当社では、10年以上にわたって何千もの実験を行ってきましたが、これらのインプットから得られたmRNAのインサイトをコンピュータが提供するようになりました。コンピュータは人間には見つけることができない相関関係を、大量のデータから見つけ出すことができます。AIを会社のDNAの一部にするために、社内のトップ200人がいかにAIを使いこなせるようにするかが課題です」(同)

【関連記事】
「なぜ喫煙者はコロナに感染しづらいのか」広島大学が発見した意外なメカニズム
「ここへきて厚労省が注意喚起」ワクチン後の"心筋炎"と"一般的な副反応"の見分け方6つ
「上司は誰なの?」冷遇され続けたmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ氏がとった"最終手段"
「実は人類史上最大の感染症」心筋梗塞のリスクが約3倍になる"ある身近な病気"
「野菜たっぷりなら良いわけではない」糖尿病患者にほぼ確実に不足している"ある食べ物"