テスラが本社をカリフォルニアからテキサスに移転することを発表した。なぜテキサスなのか。金融アナリストの高橋克英さんは「テキサスには世界的な大企業が集まっている。それには3つの理由がある」という――。
テキサス州の街並み
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テスラがシリコンバレーから本社移転

テスラは、世界一の大富豪でもあるイーロン・マスクCEOが率いる今や時価総額世界一の自動車メーカーだ。そのテスラが、本社をカリフォルニアから、テキサスに移転するという。なぜ世界最先端のシリコンバレーから移転するのだろうか。

実は、テスラだけでなく、時価総額でテスラに次ぐ2位の自動車メーカーであるトヨタの米国本社も、2017年にカリフォルニアからテキサスに移転している。日米2トップの自動車会社がなぜテキサスに移転したのか、その背景を探ることで、知られざるテキサスの実力を明らかにしたい。

テスラのマスク氏は2021年10月7日、本社をカリフォルニア州パロアルトからテキサス州オースティンに移す考えを表明した。マスク氏自身も、一足早く2020年12月、カリフォルニア州からテキサス州に移住したことを明らかにしている。

また、テキサス州ボカチカでは、同じくマスク氏がCEOを務めるスペースXの施設があり、宇宙船の製造や発射実験が行われている。

マスク氏は、「(テスラの)カリフォルニア(の拠点)も拡張を続けるが、それ以上にここテキサスで事業を拡大する」としている。なお、2021年内に稼働予定の米国第2工場「ギガテキサス」稼働により、2022年にかけて1万人以上の新規雇用が生まれるとされている。

2020年3月9日、米電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク氏(アメリカ・ワシントン)
写真=AFP/時事通信フォト
2020年3月9日、米電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク氏(アメリカ・ワシントン)

トヨタ、オラクル、HPEもテキサスへ

テスラ以外にもカリフォルニア州からテキサス州へ本社を移転する企業が相次いでいる。

2020年12月には、オラクルがオースティンに、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)がヒューストン近郊のスプリングに、それぞれ本社移転している。両社ともにシリコンバレーで創業した企業だ。そのほかにも、デル・テクノロジーズの本社はオースティンにあり、ダラスには、半導体大手のテキサス・インスツルメンツの本社、通信大手のAT&Tの本部もある。まさに、米国を代表するIT企業がこぞってテキサスに移転してきているのだ。

日本企業では、先述の通りトヨタ自動車が2017年にカリフォルニア州トーランスから、ダラス近郊のプレイノに米国本社機能を移転している。テキサス州自体が、巨大な自動車マーケットであることも背景にある。実際、日本でも人気のJEEPラングラーが本家米国で最も売れているのがテキサス州であり、米国車の象徴であるピックアップトラックが最も売れているのもテキサス州だ。なお、トヨタは、2006年にサンアントニオに完成車工場を建設し、ピックアップトラックの生産を開始している。

デンソーが2019年にプレイノに研究開発センターを開設するなど、関連企業の進出も続いている。そのほか、三菱重工業が2016年にニューヨークからヒューストンに本部機能を移転したほか、日本製鉄も2021年に米国本社をニューヨークからヒューストンに移転している。