ビジネスを効率化するため、多くの企業がコスト削減に努めている。IT企業レッドフォックスの別所宏恭社長は「現在の商品やサービスを『最適化』しすぎると、いざ売れなくなった時に身動きが取れなくなるリスクがある。企業は素早く切り替えられる余裕を持っておくべきだ」という――。
※本稿は、別所宏恭『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
企業は血のにじむコスト削減を続けているが…
経済の先行きへの危機感から、あるいは景気の影響もあって、多くの会社では、さまざまなコスト削減の取り組みを行っていると思います。
こまめに照明や空調のスイッチを切ったり、コピー機の紙として裏紙を使ったり、会社によっては少しでも交通費を安くするために、時間がかかっても安い路線をわざわざ使って打ち合わせに行かせたり……ということもあるかもしれません。
これらは本当に効果があるのか不明な部分もありますが、とくに製造業であれば、もっと厳密で科学的なコスト削減を日ごろからしているはずです。たとえば、1工程当たりの時間をコンマ単位で削ったり、工場内のモノの配置を効率化したりと、それこそ血のにじむような努力を当たり前にされているでしょう。
ただ、とくにこれからの時代は、コスト削減の効果がこれまでのようには儲けにつながらなくなってきます。
高品質で安価な製品を大量に売る時代は終わった
それはなぜか?
実は「コスト削減」は、あることが前提になっています。
それは「今、これを、こういう形でつくるのが正しい」ということ。この点を大前提として、「現在」に特化して効率化を進めていくのがコスト削減の考え方です。
これまで日本の製造業は、従業員をうまく巻き込みながら、「乾いた雑巾をさらに絞る」と表現されるような地道で細やかな改善活動を続けてきました。そのおかげで、品質を高めつつコストを下げることを可能にし、高品質かつ安価な製品を世界中に提供してきたのです。
ただ、この考え方が通用していたのは、「いいものを安く大量につくり、たくさん売る」ことで儲けていられた時代までです。