「世界の亀山モデル」頼りのシャープは敗北した

2000年代に、シャープは液晶テレビ「アクオス(AQUOS)」で一世を風靡ふうびし、三重県の亀山工場で一貫生産する液晶テレビをブランド化して「世界の亀山モデル」と謳っていました。吉永小百合さんが出演したテレビCMを覚えている方も多いでしょう。

この勢いを駆って、シャープは液晶ディスプレイのパネル生産のために、2009年設立の大阪・堺工場(当時)など莫大な投資を実施。さらに生産能力を高め、液晶パネルのビジネスへの「最適化」を進めます。

その一方で、ソニーや東芝などほかのメーカーへのパネルの外販が想定したほどにはうまくいきませんでした。そうこうしているうちに世界的なパネル価格の低下などに巻き込まれて韓国のサムスンやLGに敗北を喫し、結果として台湾・鴻海精密工業の傘下となったのは、記憶に新しいところです。

インテルの半導体の未来も安泰ではない

もうひとつ例を挙げましょう。アメリカの半導体メーカーとして誰もが知るインテルは、PCのCPUをほぼ独占していましたが、近年は同じくアメリカのAMD(Advanced Micro Devices, Inc.)などの存在感も増しています。

Intel プロセッサコアi7の基板
写真=iStock.com/4kodiak
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これはインテルがPCに「最適化」しすぎて、モバイル時代の流れを逃してしまったことも大きな原因と考えられます。覇権を握ったフィールドに根を張りすぎたためか、CPUの半導体の「微細化」と呼ばれる技術革新の流れにおいて、近年は後手後手に回っており、その間にAppleは自社開発のCPU「M1」を完成させています(正確にはCPUではなく「SoC=System on a Chip」と呼ばれる、システムを動かすのに必要な重要機能を1つのチップに載せたプロセッサ)。

現状では、まだまだ圧倒的な地位を占めてはいるものの、インテルは3Dグラフィックスなどの画像処理を行うプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)でも失敗しており、Apple製品のCPUが自社開発になっていくことで、大きなダメージを受ける可能性は否定できません。