※本稿は、高森明勅『「女性天皇」の成立』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
憲法も世論も「女性天皇」を否定しない
「女性天皇」という選択肢について、近年の各種世論調査の結果では、コンスタントに国民の高い支持を集めている。
平成30年(2018年)4月の「朝日新聞」の調査では、賛成76%に対し反対が19%。
同年9月のNHKの調査では、賛成92%に対し反対が12%。
同年10月の共同通信の調査では、賛成が82%に対し反対が14%。
同年11月の時事通信の調査では、賛成が76%に対し反対が19%。
平成31年(2019年)4月の共同通信の調査では、賛成が85%に対し反対が15%。
令和元年(2019年)5月の「読売新聞」の調査では、賛成が67%に対し反対が8%(ただし、同調査の設問には不備が指摘されている)。
令和3年(2021年)4月の共同通信の調査では、賛成が87%に対し反対が12%。
右のような実情だ。いずれも賛成が反対を圧倒している。もちろん、皇位継承という厳粛なテーマを変動幅がある世論調査の結果“だけ”で判断すべきではない。しかし一方、天皇が憲法で「国民統合の象徴」とされている以上、国民の受け止め方をまったく無視してしまうわけにもいかないだろう。その意味では、世論調査の結果にも、一定の関心を払う必要があるのは確かだ。
又、女性天皇は過去に10代・8方おられた事実がある。そのため、有力な否定論を見かけない。せいぜい「女系天皇につながるから反対」といった程度だ。旧時代的な「男尊女卑」の価値観に立たない限り、女性天皇の可能性を一方的には否定できまい。
憲法上も、帝国憲法の場合は「皇男子孫」(第2条)と条文自体によって女性天皇を排除していたのに対し、今の憲法では「世襲」(第2条)と規定するだけなので、特に女性天皇が問題視される余地はない。むしろ、「国民統合の象徴」であるはずの天皇に、男性しかなれない現在の制度は、国民の半数が女性である事実を考えると、いささか奇妙ではあるまいか。