「先延ばし」で将来像が宙ぶらりんの状態に
敬宮殿下をはじめ、内親王・女王方は制度変更の当事者でいらっしゃる。当時はメディアによるさまざまな報道もなされていた。それらの女性皇族の皆さまが、今さら「女性天皇」容認をまったく予想外の制度変更と受け取られるとは考えにくい。それよりもむしろ、制度の見直しがいたずらに“先延ばし”され、その結果、ご自身の人生の将来が「皇室に残るか、ご結婚と共に国民の仲間入りをされるか」鋭く2つに分裂したまま、いつまでも宙ぶらりんの状態で放置され続けてきた事実こそ、残酷この上ない仕打ちだったと言えるだろう。
特に敬宮殿下の場合は、女性天皇になられるか、それとも主婦になられるかという、極端に異なる2つの未来像に引き裂かれたまま、これまで20年間の歳月をすごしてこられたことになる。
それはすべて政治の怠慢、無為無策とそれを見すごしてきた国民の無関心が原因だ。
「女系天皇」も欠かせない
次に「女性宮家」を取り上げよう。
これについては、女性天皇の可能性を認める場合、未婚の女性皇族(内親王・女王)がご結婚と共に皇籍を離れるルールを一方で維持していては、制度として機能しがたい。よって、女性天皇の選択肢を採用するのであれば、女性宮家も当然採用しなければ、制度上の整合性が保てない。女性天皇と女性宮家はセットで認めるべきだ。
しかも、女性天皇と女性宮家を認めながら「女系天皇」を認めないというやり方も、皇位の安定継承を目指すのであれば、ツジツマが合わない。その意味では“女性天皇は女系天皇につながる”“女性宮家は女系天皇につながる”という男系限定維持派の言い分は間違っていない。もっと踏み込んで言えば、「女系天皇」を排除しながら「女性天皇」「女性宮家」を認めても、しょせんは“一代限り”にとどまり、将来に向けた皇位の安定継承には寄与しない。「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていく」(上皇陛下の平成28年(2016年)8月8日のビデオメッセージ)ことにはならないのだ。
普通に考えてみれば分かることだ。女性皇族がご結婚後、「女性宮家」の当主になられ、お子様に恵まれられた場合、そのお子様が男子であれ女子であれ、「女系」ということになる。女系天皇を認めなければ、皇位継承資格のない女系のお子様方はご結婚と共に皇族の身分を離れて、国民の仲間入りをされることになる。結局、その女性宮家は“一代限り”で幕を閉じる他ない。
内廷の女性皇族がご結婚され、お子様に恵まれた後、女性天皇として即位されても、同じように皇位継承の“行き詰まり”をただ一代だけ先送りするにすぎない。皇位の安定継承にはまるでつながらない。ただ“目先”だけ「皇族数の減少」に歯止めがかかったような錯覚を与えるだけだ。
そんなことのために、対象となる女性皇族方のたった一度しかない人生を犠牲にしていただくのは、あまりにも申し訳ないことではあるまいか。