なお、私自身もある時期から、競争的な世界観からは距離を置くようになったかと思います。それは私自身が「中年」に差しかかったことと無縁ではありません。
一度勝っても、競争は終わることなく永遠に続き、きりがない。勝ち続けなければ維持できないような価値や居場所は、とても高コストで疲れてしまいます。そういうところを自分のメインの居場所とすることが、心許ないなと感じるようになったのです。
今は、医師としても、いわゆる「王道キャリア」からは相当かけ離れたところをコロコロしていますが、そのことであまり困っていませんし、昔よりもだいぶ生きやすくなっているなあとしみじみ感じます。
山頂を目指す道は「寄り道」に過ぎない
これは友人が教えてくれたことなのですが、ニュージーランドやオーストラリアでの山登りのコースには、メインルートに山頂が含まれていないことも多いそうです。山頂を目指す道は、あくまでも「数ある寄り道のひとつ」という扱いだそうです。
頂点を目指すのが唯一の目標ではなく、「寄り道」の一つにすぎないという考え方は、なんとも優雅で、本質を突いているように思います。
拙著『我慢して生きるほど人生は長くない』では、競争との関わり方を見直し、自分の心を取り戻すにはどうすればいいかなど、心療内科医の立場から得た気づきをシェアしています。
拙著があなたの人生において「安心」の土壌を育むことに少しでも役に立ち、本来の可能性を発揮する一助となることを強く願っています。