もちろん「ないよりはいい」という声はあるが…

菅義偉官房長官はマスクが1枚200円になることを明らかにしたうえで「マスクがないという声が多いのでスピード感を持って行うべきだと判断した」と説明した。単純計算で200億円以上かかる。もちろん「ないよりはいい」という声はあるが、この予算をほかに使うべきだという声のほうが圧倒的に多い。国民が今、求めているのは布マスクではないし、そもそも、遅い。

3日付の朝日新聞によると、このアイデアは経済官庁出身の「官邸官僚」の提案で、1カ月以上前から温められていたのだという。

新型コロナ対応において安倍首相は、政府・与党や専門家の意見を十分に聞かず、経済産業省出身の今井尚哉首相補佐官らの意見を聞いて結論を出すことが少なくなかった。小中高校の一斉休校要請などはその典型で、国民の混乱を招くこともあった。

官邸官僚のアイデアと国民のニーズとの深刻なずれ

今回の「アベノマスク」騒動でも同様の構造が浮かび上がる。そして官邸官僚のアイデアと国民のニーズとずれが生じていることも露呈した。

安倍氏は2日の衆院本会議で「急拡大するマスク需要の抑制を図り、国民の不安解消に資するように速やかに取り組みたい」と説明した。ただ、今回の対応が不評であることは、本人の耳にも入っている。

安倍政権は、国民から批判を受ける時、新しい方針を打ち出して目をそらしてきた。今回の場合、それは緊急事態宣言なのか、経済対策なのか、それとも……。いずれにしても「サプライズ効果」に期待せず、十分な議論の末、多くの国民が納得する方針が出されることを願うばかりだ。

ただし、布マスクは4月中旬ごろから各戸に配布が始まることは、指摘しておきたい。つまり、新しい方針を打ち出して国民の関心をそらすことに成功したとしても、自宅に布マスク2枚が届く時、国民はもう一度「アベノマスク」のことを思い出すのだ。

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