「成長と分配の好循環」を掲げる岸田文雄新政権が発足した。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔さんは「新規感染者に固執すれば、経済の成長も分配も不可能だ。行動制限だけに頼る従来の政策を変えることが、政権の最初の試金石になる」という――。
会見に臨む岸田文雄首相=2021年10月4日午後、首相官邸[代表撮影]
写真=時事通信フォト
会見に臨む岸田文雄首相=2021年10月4日午後、首相官邸[代表撮影]

「再分配」はグローバルスタンダード

岸田新内閣の組閣が発表された。人事に関しては良く言えばフレッシュ、悪く言えば経験不足といった声が目立つ。その評価は専門家に任せるとして、本欄では経済・金融政策の方向性および、新政権に目先最も求められることを整理してみたい。

既報に倣えば、岸田新政権の経済政策の要諦は「再分配」と見受けられる。総裁選の時点から岸田総裁は「成長と分配の好循環」を経済政策の柱に掲げている。世界的に格差拡大への問題意識は高まっており、日本に限らず経済政策の振り子が再分配政策に振れているのは間違いなく、それ自体はグローバルスタンダードに沿った動きと言える。

検討されているという数十兆円規模の経済対策の中身に関しては、ひとり親家庭ないし共働き家庭を対象にした臨時の休業手当、事業者を対象とした持続化給付金や家賃給付金の再支給などが取沙汰されている。

そのほか、非正規雇用者や学生、女性などもコロナ禍における弱者として支援対象だと言及されており、総じて「持っている者」から「持っていない者」への再分配が強調されている。

再三メディアに取り上げられる「令和版所得倍増計画」は「国全体の底上げを図る」というよりも、「現在の『持っていない者』を底上げして中間層を再構築する」という部分に狙いがあるように見える。一律20%に設定される金融所得課税の引き上げは再分配を掲げる岸田政権にとってアイコンのような政策であり、実現への意欲は相応に強いと思われる。