だとすれば、臨時医療施設の開設は直接的かつ有効なアプローチである。その上、ワクチンパスポートを活用し行動制限一本鎗の防疫政策から抜け出せるとしたら、「日本だけコロナが終わらない」という閉塞状況にも終止符が打てるだろう。

緊急事態宣言の乱発により実体経済のスイッチのオン/オフを頻繁に切り替えるようなコストの大きい政策は家計・企業部門における予測可能性を著しく低下させ、消費・投資意欲を抑制する。実際、貯蓄・投資(IS)バランスを見れば、家計・企業部門における貯蓄過剰は年初来から蓄積傾向にある(図表3)。

日本の貯蓄・投資(IS)バランス

日本は元々そうした傾向が成長率や物価を抑制している経済構造だと指摘されて久しいが、過去1年でその傷はさらに深まった。

岸田4本柱の着実な遂行を経て、新規感染者主義からの脱却を図ることができれば、幸いにも高水準に至っているワクチン接種率も相まって、岸田政権のコロナ対策は高い評価を受けるのではないか。

行動制限一本鎗の戦略から脱却し、短期的にはより成長を重視した政策をPRしつつ、中長期的には再分配政策を推し進めるというのが、政権の出だしとしては最も無難なものになるのではないかと察する。少なくとも再分配や新自由主義からの脱却など、是非はさておき、初っ端から株式市場を敵に回す情報発信であるようにも思え、控えた方が得策であるように思う。

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