コロナが収束すれば景気はよくなるのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「選挙が近くなると政治家はバラマキ政策を公約するが、国の借金だけが増え、景気は悪化するばかりだ。能天気な政治家に任せていては景気回復は期待できない」という――。
日経平均株価は米国の債務不履行の可能性を懸念してウォール街が569ポイント以上下落した後、639.67ポイント(2.12%)下落し、2万9544円29銭で終了した
写真=EPA/時事通信フォト
日経平均株価は米国の債務不履行の可能性を懸念してウォール街が569ポイント以上下落した後、639.67ポイント(2.12%)下落し、2万9544円29銭で終了した=2021年9月29日

バラマキを約束する無責任な政治家たち

選挙が近くなると、政治家は大盤振る舞いを国民に約束し出す。自民党総裁選は「バラマキ政策」のオンパレードだった。最近では野党も、衆院選向けに消費税の一時減税や(1年だけらしいが)「年収1000万円程度以下の世帯は所得税を免除する」などの「はちゃめちゃ」な公約を発表した。

財政状況の厳しい日本では、政治家が選挙前に語るバラマキ政策は絵空事だ。それに、だまされてしまう国民が一定数いるのも残念な話だ。政治家は、結果として国民を不幸にする政策でも、「選挙に勝てるのであれば、この国はどうなってもいい」と考えているとしか思えない。1980年代以降、40年間も世界ダントツのビリ成長を続けた経済はバラマキでは決して良くならない。

この国がポピュリズム政治にうつつを抜かしている間に、先週後半から、世界では不気味な動きが始まっている。私が「日本のXデーの引き金になる可能性がもっとも高い」と警告してきた米長期金利がじわじわと上昇を始めたのだ。

パウエル議長がテーパリングの時期を明確化したせいでもあるし、連邦準備制度理事会(FRB)が一時的と断言してきたインフレが、ちっとも一時的でなさそうだからだ。

さらにはノルウェー中銀がIMF加盟主要10カ国の中で先陣を切って利上げを開始し、英国では年内利上げの観測も出始めている。世界の中央銀行が金融緩和からの出口を模索し始めた。

彼らの出口戦略が極めて難しいのは衆目の一致するところ。ただ難しくとも出口があるだけ救われる。日銀だけはいまだに出口を示せずにいる。日銀は、また置いてきぼりである。このことは、日本に悲惨な結果をもたらすだろう。