株価が低迷しているせいで、世界の時価総額に占める日本株の比率は1990年の3割超えから、今年8月には5%台にまで低下してしまった(9月15日付日経新聞朝刊「日本の変化、マネーが問う、日経平均3万670円、海外勢再び流入」)。地盤沈下が激しい。当然、個別企業も凋落だ。日経平均が史上最高値を付けた1989年の時価総額世界1位はNTT、2位日本興業銀行、3位住友銀行と上位10社中、7社が日本企業だった。
それが現在では日本企業は10社以内に1社も入っていない。当然だろう。ご想像通りGAFAが上位を占めている。日本企業ではトップのトヨタが40位前後のようだ。
さらに、ベンチャーキャピタルへの投資状態を聞くと一層、がっくりしてしまう。「2020年の米国のベンチャーキャピタル投資額は円換算で16.7兆円。前年比13%増え過去最高だ。かたや日本は1512億円。米国のわずか1%しかない。」と日経新聞は報じた(8月19日付日経新聞朝刊「ドラッカーの警鐘とIPO問題 大機小機」)。
日本の若い企業が今後、世界で存在感を示す可能性も小さいようだ。力ある企業が出てこなければ日本人の給料は低いままだろうし、儲からなければ外資に淘汰される可能性も高くなる。ある日突然、「上司が外国人ばかり」という日が来るかもしれない。
不発に終わった経済政策のツケ
政府はこのような状況から脱すべく、財政出動を重ねてきた。政府主導で経済再建を狙い、インフラ整備や社会保障を充実させた。しかし、今まで述べてきたように、経済は世界断トツのビリ成長のままだ。多額の財政出動(注:社会保障への支出も財政出動)の結果、世界最悪の財政赤字国家になった。
財務省によると、国の借金総額は約1220兆円(6月末時点)。とんでもない数字だ。10兆円ずつ返済しても122年もかかる。それも金利は122年間上昇せずゼロ%のまま、借金総額も今後は増えないという前提での数字だ。到底、不可能である。
この額は民間の融資やローンの額を大きく上回る。9月公表の日銀『金融経済統計月報』によると、国内の銀行の貸出金は555.9兆円だ。信金は78.4兆円、信組は11.9兆円(いずれも2020年3月末時点)。現在、政府は特別法のもとで強引に借金を重ねているが、基本、財政法で国が借金をすることを禁止している。禁止されている国の借金が民間の借金の約2倍とはとんでもないことだ。
通常、財政の危険度は対GDP比で測る。税収は大雑把にいってGDPに比例するからだ。すなわち対GDP比の借金額が大きいほど税収で借金を返すのが難しくなる。借金額の対GDP比は、「税金で借金を返す難易度ランキング」なのだ。
国際通貨基金(IMF)が昨年公表した報告書によると、昨年10月時点の日本の政府債務残高は対GDP比266%。先進7カ国(G7)で断トツの1位だ。2位のイタリアでさえ161%、それに続く米国でも131%だ。フランス、カナダ、英国、ドイツはさらに低い数字となっている(2020年12月25日付日経新聞朝刊「政府債務残高、GDP比突出、日本266%、米の2倍」)。
借金地獄の日本は楽観、マシな米国が悲観
コロナ禍で各国は大型の財政出動を行った。それでも日本ほど致命的な国はない。彼らは平時に日本ほどの財政出動をしておらず借金をため込んでいないからだ。
例えば、米国の債務残高は今年9月末で22.5兆ドルになると議会予算局が試算していた。円換算すれば約2500兆円にすぎない。一見すると多額なのだが、GDPは日本の約4倍もあるのに借金額は2倍ほどにすぎない。税収で借金を返すのは日本よりはるかに楽である。