最後には大株主である国との交渉が残る
このSBI(北尾吉孝社長)と新生銀行のTOBをめぐる確執は泥沼化の様相を呈している。SBIは9月10日から12月8日まで新生銀行に対してTOB(株式公開買い付け)を行っており、出資比率を48%まで引き上げたい意向だ。買い付け価格は新生銀株の9月9日終値の1440円を39%上回る1株2000円に設定されている。
これに対して新生銀行は10月21日、条件付きでTOBに反対すると発表した。買い付け株数に上限があることや買い取り価格が十分でないことから「株主共同の利益に資さない」(工藤英之・新生銀行社長)というのが理由だ。SBIが懸念解消に向け条件を変更するなら賛同に回るとしたが、SBIは即刻、条件変更に応じない姿勢を表明。両者の確執は銀行界初の「敵対的TOB」に発展した。
SBIが買い付け株数の上限を撤廃し、50%超の株式を取得するには、改めて銀行法第52条など法令上の許可が必要で、SBIが新生銀行の親会社になるために、銀行持ち株会社の認可を取得しなければならないためだ。その上で最後には大株主で新生銀行株の20%程度を有する国(預金保険機構)との交渉が残る。
「地銀の株価は安すぎる。うちと組めばもっと上がる」
今後の焦点は、新生銀行が11月25日に開催する臨時株主総会に移る。新生銀行はTOBに対する買収防衛策を諮る予定で、SBI以外の株主に新株予約権(1株当たり普通株式0.8株)を無償で割り当てる。株主総会で過半の株主が買収防衛策の発動に賛成すれば、TOBが成立してもSBIの保有株の価値が大きく低下するため、SBIが実質的に経営を支配するだけの株式比率を維持できなくなる。
SBIはすでに株主総会の票読みを始めており、買収防衛策に過半の賛成が得られず、結果的に48%の株式を握るシナリオに自信を示しているが、総会の帰趨は予断を許さない。
SBIがTOB成立に自信を持つ背景には、新生銀行を含む地銀連携「第4のメガバンク構想」への自負がある。北尾氏は16年頃から「地銀の株価は安すぎる。うちと組めばもっと上がる」と地銀経営者に誘い水をかけてきた。その後、18年に地銀投資を手掛ける私募投信「SBI地域銀行価値創造ファンド」を立ち上げ、第4のメガバンク構想を推し進めている。これまでに第二地銀を中心に8行に資本出資しており、「当面、10行程度まで広げる」(北尾氏)との意向を表明している。新生銀行へのTOBはその中核に位置付けられる。