「第4のメガバンク構想は地銀のため」は本当か
北尾氏によれば、「第4のメガバンク」は、「第4」と銘打っているものの、従来の3メガバンクとは一線を画する新しい発想・哲学に基づく「新メガバンク」であると豪語する。そのコンセプトは「社会課題解決型ビジネスモデル」であり、地方創生のためには地域金融機関の機能強化が欠かせないと説く。
例えば、地域金融機関にとって重たい負荷となっているシステム開発については、プライベートクラウドサービスを共同持株会社のもとで、参加地域金融機関と共有することで、大幅なコスト削減が実現できると見ている。また、マネーロンダリング対応では、証券会社など35社を糾合した「証券コンソーシアム」を設立、本人確認を共同プラットフォーム化するなどの実績がある。
代々の家業から中国の歴史・文化に精通する北尾氏は、論語を紐解く。「第4のメガバンク構想」も「世のため、人のため」であり、「地銀のため」と説く。利益は後でついてくるというのが哲学だ。しかし、証券会社そしてベンチャー業界という生き馬の眼を抜く熾烈な競争社会を生き延びてきた北尾氏が、ただ人のために尽くすからというわけではなかろう。そこには北尾氏一流の算盤勘定があるとみるべきだ。
地銀が傘下に入れば、間接的に公的資金を注入できる
鍵は政治との関係にある。「第4のメガバンク構想」の雛形は、「信用金庫業界の中央銀行といっていい『信金中央金庫』や農林系統金融機関の資産運用を一手に担う『農林中央金庫』のようなイメージではないだろうか」(地銀幹部)と受け止められている。
実はこの構想は、自民党の金融調査会「地域金融機関経営力強化プロジェクトチーム」の提言とオーバーラップしている。金融調査会の会長である山本幸三氏は、プロジェクトチームの提言について、「地銀も信金中央金庫のような系統運用機関を創るべきだ。地銀のトップたちに提言し、どう対応するか見ている段階だ」と指摘している。
だが、その裏に隠された最大のテーマは、地方経済のセーフティーネットという役割と見られている。なぜなら「第4のメガバンク構想」の最大の効用は、持ち株会社を通じて地銀が公的資金を受けられることにあるためだ。「共同持株会社を通じて傘下の地銀が経営危機に陥った場合に、間接的に公的資金を注入する受け皿ではないのか」(メガバンク幹部)との声も聞かれる。