感染再拡大による動線の寸断が打撃に
韓国銀行は、内需落ち込みの主な要因として、外食や宿泊などサービス関連の個人消費が減少したことを指摘している。その背景要因を考えると、6月下旬から韓国国内で感染が再拡大し、動線が寸断された影響は大きい。韓国政府も、動線が寸断されたことによる消費の減少に世界的な供給制約が上乗せされたことが7~9月期の内需を圧迫したと評価している。
世界的に見ても夏場の感染再拡大によって飲食、宿泊、交通関連の支出が減少し、景気回復ペースが弱まった国は多い。また、東南アジアで感染再拡大によって動線が寸断されて自動車部品や車載半導体の調達が減少したことは、韓国国内での設備投資を減少させた。
ただし、感染の再拡大だけが7~9月期の内需落ち込みの要因ではないだろう。個人消費などの減少には、複合的な要因が影響しているはずだ。
雇用環境の悪化、家計の過剰債務、物価上昇の三重苦
消費が伸びない主な要因に、雇用環境の悪化、家計の過剰債務、物価上昇がある。コロナ禍以前から雇用と債務の問題への懸念は高まってきた。一つの見方として、コロナ禍は韓国経済の構造的な問題を一段と深刻化させ、内需が追加的に圧迫されている可能性がある。
まず、韓国の雇用環境は失業率のデータが示す以上に厳しいとみられる。2017年から2020年の間、韓国では従属型の労働者(企業などに勤める人)に占める臨時の雇用(非正規雇用)者の割合が20.62%から26.1%に上昇した。同じ期間、OECD加盟国での平均割合は12.18%から11.42%に低下した。一つの解釈の可能性は、正規社員として働きたいものの非正規職に就かざるを得ない人の増加だ。正規雇用の機会が減少しているといってもよいだろう。