約8年ぶりに電気料金が値上げされる

また、家計の債務残高の増加も深刻だ。その背景要因は多い。アジア通貨危機の後、韓国政府は個人消費の増加と税収強化のためにクレジットカードの普及を重視した。その結果、カードでの支払いを選択する人が増え、社会全体で借り入れへの抵抗感は低下し、債務が増え始めた。

近年の韓国では首都圏のマンションなど不動産市況が上昇し、住宅取得のための借り入れも増えた。その後、コロナ禍の発生によるサービス業の業況悪化、本年の6月ごろからの利上げ期待を反映した短期ゾーンを中心とする金利上昇などによって、借り入れに慎重になる、あるいは返済負担の増加を懸念する個人が増え、消費が減少したとみられる。それは内需を圧迫する。

3点目が物価上昇だ。韓国では生産者物価が上昇し、徐々に消費者物価も上昇している。物価上昇は消費者の節約心理を強める要因であり、7~9月期の個人消費に負の影響を与えただろう。10~12月期、韓国では世界的なエネルギー資源の価格上昇によって約8年ぶりに電気料金が引き上げられるが、政府はすでに値上げが決まったもの以外の公共料金の年内据え置きを表明した。それは、物価の上昇を一段と警戒する消費者が増え、内需に追加的な下押し圧力がかかるとの不安が高まっているからだろう。

韓国の街並み
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景気の減速はさらに鮮明になる恐れ

今後、韓国経済では内需が追加的に落ち込み、景気減速が鮮明化する可能性がある。

まず、感染状況は懸念材料だ。10月最終週に入っても韓国の新規感染者数は十分に低下していない。その一方で、11月から韓国では段階的にソーシャルディスタンスが緩和される。感染者が減り、徐々に韓国国内で動線が修復されれば、飲食、宿泊などサービス業の業況が持ち直しに向かう可能性はある。韓国政府はそれを年4.0%の実質GDP成長率目標の達成につなげたいようだ。

しかし、感染再拡大が落ち着かない中で人流が増えれば、感染者数が反発する恐れがある。その展開が現実のものとなれば、韓国の経済と社会にはかなりの負の影響があるだろう。中国や英国などでの感染再拡大の状況を見ていると、そのリスクは過小評価できない。仮に、11月以降に韓国の感染者数が再度増加し始めれば、動線は寸断され、サービス関連を中心に個人消費は一段と減少して内需が落ち込み、景気減速が鮮明化する可能性がある。