「危機対応」をその場しのぎで終わらせてはならない
外食産業だけでなく多くの業界で、市場環境はコロナ禍によって一変した。各企業はそれぞれ、ネット販売の強化、マイクロツーリズムの深耕、テレワークの推進、テイクアウトの拡大など、新たな動きを次々と見せている。
とはいえ、突発的な環境変化への対応を続ける一方で、各企業は単なる出血停止にとどまらない、未来への展望につながる行動ができているだろうか。私たちはコロナ禍を、進化を止める言い訳にしてはならない。
慶應義塾大学名誉教授の池尾恭一氏は新著『ポストコロナのマーケティング・ケーススタディ』(碩学舎刊、2021年)のなかで、オンライン商談を例にとりながら「多くは、新型コロナウイルス感染症を回避するために……やむを得ずとった動きであることがほとんどであった」と述べている(p.32)。コロナ禍を受けての迅速な行動は企業のバイタリティーの表れだが、今後の中長期的な競争を勝ち抜くには冷静な戦略的見通しの裏打ちが必要だ。
企業家精神の旺盛な組織や個人は、コロナ禍が生んだ状況をもひとつの実験場として、事業の新たな展開を着々と進めている。テイクアウト専門店のスシロー To Goもまた、そのひとつであるといえるだろう。