盗撮を繰り返す人たちには根底に「認知の歪み」がある。加害者臨床を専門とする精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏は「盗撮加害者の中には『スカートをはいているということは、盗撮されてもOKということだ』という人すらいる。罪悪感から目をそらすために自己正当化を繰り返した結果、現実の捉え方が無自覚の内に大きく歪んでいく」という――。

※本稿は、斉藤章佳『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

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「やめたくない」からこそ都合のいい認知の枠組みを作る

盗撮行為がエスカレートしていく理由のひとつに、「認知の歪み」が挙げられます。私は「認知の歪み」を「問題行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み」と定義しています。

彼らは、口では「もうこういうことはやめたい」と言います。問題行動をやめたいし、罪の意識を心の中では感じているのです。しかし一方で、「問題行動を続けたい」とも考えています。人は、やってはいけないとわかっていながらも行動化するときに、心理的苦痛や葛藤を感じます。背徳感が快感に変わるという人もいるでしょうが、それは盗撮加害者には少ないです。

そこで、こういった問題行動をやめられない罪悪感から一時的に目をそらせるために、自己正当化する理論を洗練させていった結果、本人にとって都合のいい「認知の枠組み」を作りだしていくのです。自分がしていることを正当化し、「自分は間違っていない」「自分は悪くない」と責任転嫁し、そうすることで加害行為によって生じる責任から目をそらし、自分が見ている現実をも歪ませていきます。