「認知の歪み」のあぜんとする中身
以下は、盗撮加害者521人からヒアリングしたものになります。
(1)相手に気づかれていなければ、相手を傷つけないしOKだ。
(2)あれだけネットで盗撮画像が出回っているということは、それだけ簡単に盗撮できるということだ。
(3)痴漢行為と比べて、相手に触れないからそれほど大したことではない。
盗撮は相手に触れない「非接触型」の性犯罪です。そのため直接相手に触れる痴漢と比べることによって、自分の問題行動を矮小化します。このパターンの認知の歪みに陥る盗撮加害者はもっとも多いといえます。加害者は盗撮によって被害者が何を奪われるかをまったく想像できず、自分のやっていることはそれほどひどいことではないと本気で思い込みながら、盗撮行為を繰り返すのです。
(4)スカートをはいているということは、盗撮されてもOKということだ。
(5)下着が見えそうな服装の人は、心の中では盗撮されたいと思っている。
「スカートをはいていたから」「露出の多い格好をしていたから」など、相手の服装に落ち度があるという理由を挙げるのも認知の歪みの特徴です。被害者はたまたまその服やスカートをはいていただけ、駅構内を歩いていただけ、エスカレーターや階段を使っていただけです。まったく何の落ち度もありません。
しかし、彼らの歪んだ認知の世界では、このたまたま居合わせた偶然が「盗撮をしていい理由」になります。盗撮加害者が見ている世界と被害者が生きる現実は、まったく別ものなのです。
「相手に受け入れてもらっている」と行為責任を免責する
(6)こちらをチラチラ見ている女性は、もしかしたら私に盗撮されたいと思っているのではないか。
(7)和式のトイレを選んでいるということは盗撮されたい人に違いない。
(8)相手からわざわざ近づいてきたのだから盗撮してもいいだろう。
また、(6)のように「相手がきっかけを作った」「相手から誘ってきた」などと自分の都合のいい解釈をする認知の歪みは、盗撮加害者だけでなく痴漢やレイプ犯、小児性犯罪者にも見られます。こういった認知の歪みによって、「自分は悪くない」(誘ったのは相手だから)とばかりに自分の加害行為を免責しています。
彼らは、明らかにバレるだろうという場所や手口でも、盗撮するのに何の迷いもありません。逮捕を恐れながらも、相手に受け入れてもらっているという矛盾した認識を抱えた彼らは、周囲をまったく客観的に見ることができていないのです。これは、痴漢行為でもしばしば見られる傾向です。